189話 ページ39
「いい、のかなぁ……?」
「うん……もしAが自分が赦せないのなら、僕が赦すよ。……もう、いいんだよA」
「どうか、僕を信じて」と言いクダリは、私を更に強い力で抱きしめる。
押しつぶされそうなくらいに抱きしめてくれるクダリの優しさに、私のなけなしの理性がぷつりと切れた。
まるで幼い子供のようにわんわんと泣く私に、クダリはずっと私の背中を撫で続ける。
もしかしたら私は、ずっと誰かに赦されたかったのかもしれない。
クダリの胸の中で縋るように泣きわめきながら、私はどこか他人事のように思う。
それが、正しいのかは自分でも分からない。
でも、今この瞬間確かに胸の奥に巣食っていたどろどろとした感情が小さくなったのは確かなのだ。
＊
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どれだけ泣き続けていただろうか。
自分が流した涙のせいで冷たくなったクダリのスーツの冷たさに、私はふと我に返る。
いかに自分が情けない姿を同僚に晒したのかを自覚し、私は途端に恥ずかしくなった。
恥ずかしさから、私は弱弱しい力でクダリの胸を押して距離を取る。
「す、すみません……大変見苦しいものをお見せしてしまって」
「ん? 全然見苦しくなんてないよ。それより大丈夫? 目、痛くない?」
私の頬に手を当てながら見やる彼の視線に、私は恥ずかしさから顔に熱が集まるのを感じた。
「だっ大丈夫です……これ以上の心配は無用です。そ、それより、時間を取らせてしまって申し訳ありませんでした」
そこまで話して一番大事な謝罪をするのを忘れていたことに気付いた私は、勢いよく立ち上がり彼に向かって頭を下げた。
しかし、クダリから返ってきたのは私の予想外の言葉だった。
「……どうして謝るの? Aはまったく悪くないのに」
「え、と……」
「それに、心配無用って? 君の心配しちゃいけないの?」
口元には笑みを浮かべてはいるが、その目は笑っていない。
そんな器用な表情をするクダリに、私は背筋に冷たいものが流れるのを感じ、私は恐る恐る口を開く。
「だ、だって、ただの同僚の癇癪に付き合わせてしまったのですから、謝るのは当然では。それに心配も、迷惑をかけてしまった私にこれ以上かけていただくなんて」
「なら、家族になろう」
「はぇ……?」
クダリの口から紡がれた言葉に、思わず私は逸らしていた顔を戻した。
間抜けな声をもらした私の眼前には、先ほどとは打って変わってにっこにこの笑顔を浮かべたクダリの顔があった。
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長月シキカ(プロフ) - ミサさん» コメントありがとうございます!! レスが遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。多くの作品から当作品を見つけていただけただけでも嬉しいのに、このようなコメントまでいただけて涙が出るほどに嬉しく思います^^ こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2022年3月29日 21時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサ - 完結されて日にちが経ちますが、最近見つけたこの作品を読み出してとても面白くページを読み進める手が止まりませんでした。とても良い作品に出会えて嬉しいです。ありがとうございます。 (2022年3月25日 17時) (レス) id: 068b87fb6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年10月24日 22時
