187話 ページ37
「デンチュラ、"でんじは"! アイアント、"いわなだれ"!」
「ジャローダ、"リーフストーム"! ラプラス、"ハイドロポンプ"!」
誰一人いない公園に、指示の声と攻撃音がこだまする。
息もつかせぬ攻防が続く中、ついに決着がついた。
ドシャァと地面に倒れ伏したのは、私のポケモンたちだった。
ハァハァと息の上がった私は、息を整え倒れたジャローダ達に駆け寄った。
「ジャローダ! ラプラス!」
彼女らのもとへと駆け寄ると、二匹らは申し訳なさそうな目をしながら傷だらけの体を起こした。
すぐに傷を治してやりたいが、最近はバトルをすることもなかったため今手元にキズぐすりを持っていない。
すぐに、ポケモンセンターに向かわねばと思っていた私にクダリが近づいてくる。
なんだと思っていると、クダリは手の中にあったある物を私に手渡した。
「これは、キズぐすり?」
「うん。僕、まだいっぱい持ってる。だから使って」
バトルのぎらついた目から一変、いつもの笑顔を浮かべてるクダリに一言礼を言ってから私はありがたくキズぐすりをジャローダ達に使用する。
彼女らの体にスプレーすると見る見るうちに元気になっていくのをみて、本当にポケモンは不思議だなぁと心の中で思う。
「ねぇA」
「はい?」
「楽しかった? ポケモンバトル」
まるで明日の天気を聞くかのような軽さでそう聞いてくるクダリに、私は彼に向けていた顔を地面へと移動させる。
「……私に、そんな資格も権利もありませ」
「僕はっ」
私の言葉を遮りクダリが声を張った為、私は落としていた視線を再び彼に合わせてしまった。
すると、しゃがんでいる私と目を合わせたまま彼は膝を折る。
目を合わせた彼の目は、今まで見たこともないほどの真剣さを帯びていた。
「僕は、Aの本心を聞いている。資格とか権利とか、そんなのは関係ない。君の本心からの言葉が聞きたい」
「わ、私は……」
そう言い淀む私にクダリは急かすことも責めることもしなかった。
だが、その代わりとでも言うように私の右手にそっと触れ、そのまま掴み上げた。
いきなり掴まれた右手の中にあったキズぐすりはコトリと音を立てて地面に落下する。
そんな音などを気にする隙を、クダリは与えてくれなかった。
「お願い、僕にAの本心を教えて」
私の右手を両手で掴み自分の額に押し付けるクダリの姿は、まるで神に懇願でもするかのように見えた。
いや、まさしく私なんかに懇願しているのだ。
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長月シキカ(プロフ) - ミサさん» コメントありがとうございます!! レスが遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。多くの作品から当作品を見つけていただけただけでも嬉しいのに、このようなコメントまでいただけて涙が出るほどに嬉しく思います^^ こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2022年3月29日 21時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサ - 完結されて日にちが経ちますが、最近見つけたこの作品を読み出してとても面白くページを読み進める手が止まりませんでした。とても良い作品に出会えて嬉しいです。ありがとうございます。 (2022年3月25日 17時) (レス) id: 068b87fb6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年10月24日 22時
