154話 ページ4
「それは是非、歴戦の猛者たちと共にバトルサブウェイにてお待ちしておりますね」
小さく笑みを浮かべそう言いながら、私は自分の右手をごく自然な流れでこめかみあたりにかざす。
つまりは、敬礼である。仕事柄、このポーズが自然と癖づいているのだ。
もし、この二人がトレインに乗ってくれたとしたらきっと連勝してノボリかクダリとバトルすることになるだろう。
最近、心躍るバトルが出来ていないと嘆いている二人ならきっと喜ぶだろう。
二人の喜ぶ顔を思い浮かべていると、お店のベルが鳴りドアが開いたことに気付いた。
結構長居してしまったし、そろそろお暇するには良い頃合いだ。
そう思いネズさん達に一言を言おうとし口を開きかけた瞬間、後ろから私の名を呼ぶ声が飛び込んできた。
その声に、私は聞き覚えがあった。
聞き間違えるわけがない、この優しくて懐かしい心地になるこの声は。
ゆっくりと後ろを振り返り立ち上がると、思った通りの人物がそこにいた。
「A君っ」
「……お久しぶりです、カブ叔父さん」
心配したようなそれでも会えて心から嬉しそうな表情を浮かべるカブ叔父さんに対して、私は嬉しさと気恥ずかしさ、そして自分の心に巣食う気まずさから私はどんな顔をすればいいのか分からなくなってしまう。
だが、やっぱり嬉しさが勝り私は小さく笑みを浮かべてみせた。
「Aさん、カブ選手と知り合いだったんだ」
「言われてみれば、Aさんにはどこか面影が」
「あぁネズ君に……君は今日のバトルを突破した子だね」
「俺の妹のマリィです」
ネズさんがマリィさんに向かって目くばせすると、彼女は叔父さんに顔を向けペコリと頭を下げる。
そんな彼女に、叔父さんはへにょと眉を下げ笑みを浮かべた。
「それにしても、こうして会えて良かったよ。直接会ったのは何年ぶりだろうか。大きくなったね」
「これでも、もう三十五ですからね。叔父さんもお元気そうで何よりです……それで、叔父さんはどうしてここに?」
カブ叔父さんはあまりお酒を飲まないから、こういう場所には好んで足を運ぶことはしないと記憶していた私のその言葉に、叔父さんは言葉を返すことなくチラリと後ろを振り返る。
叔父さんのその行動に首を傾げつつ、彼の後ろの方へ目をやるとゆらりと動く影が見えた。
見上げるほどの大きな影の正体に、私は見覚えがあった。
大男は自らの背を小さくするように、どこかシュンとしているように見えた。
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長月シキカ(プロフ) - ミサさん» コメントありがとうございます!! レスが遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。多くの作品から当作品を見つけていただけただけでも嬉しいのに、このようなコメントまでいただけて涙が出るほどに嬉しく思います^^ こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2022年3月29日 21時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサ - 完結されて日にちが経ちますが、最近見つけたこの作品を読み出してとても面白くページを読み進める手が止まりませんでした。とても良い作品に出会えて嬉しいです。ありがとうございます。 (2022年3月25日 17時) (レス) id: 068b87fb6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年10月24日 22時
