178話 ページ28
まるで天を仰ぐように顔を覆って上を向くノボリに僕はどうしたのと聞いたら、ノボリはその大きな手をのけて僕の方へ顔を向けた。
「クダリ、貴方Aの事を好いているんですか?」
「変なノボリ、勿論好きだよ。でもそれはノボリも同じでしょ?」
「えぇ……ですが」
「えっ! ノボリ、Aの事嫌いなの!?」
ノボリから否定のような言葉が出かかり、僕は思わず声を上げた。
僕のその声に、ノボリは珍しく目を見開いてから「違いますっ!」と即答する。
自分が出した声が思った以上に大きかったのが恥ずかしかったのか、ノボリはわざとらしく咳ばらいをした。
「私もAの事は好ましく思っております。ですが……いえ、これは貴方自身が気づくべきことでしょうね」
小さく息をつきながらそう言うノボリの言葉の意味が分からず、僕は首を傾げる。
頭の中がはてなマークで一杯になりどういうことなのかノボリに聞くが、ノボリは何かを知っているような顔をするが、するだけで教えてはくれなかった。
「そんなことよりクダリ。いいんですか?」
「え、あっ!?」
ゆったりとした動作で指を前方へ向けるノボリに、僕は声をあげ前を向いた。
しかし、さっきまでいたはずのAの姿はもうそこにはなかった。
折角数週間ぶりに会えたから、少しお話がしたかったんだけど。
そう思っていると、隣から「しょうがないですね」と呟くノボリの声が聞こえ僕は横へ首を回す。
すると、ノボリはとっても優しい顔をして僕を見ていた。
「Aは私達から見て右の方へ歩いて行かれてましたよ。クダリの足なら追い付けるんではないですか?」
「いいの?」
「えぇ。この後は少し時間に余裕がありますからね」
だからお行きなさいとノボリの言葉に後押しされ、僕はノボリにお礼を言ってから駆け出した。
「まったく、あのような顔をしておいて自覚無しとは……我が弟ながら、少々心配になってきましたよ。私」
そう独り言ちやれやれと言わんばかりに肩をすくめたノボリの様子など知る由もなく、僕はAの後姿を探すのだった。
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長月シキカ(プロフ) - ミサさん» コメントありがとうございます!! レスが遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。多くの作品から当作品を見つけていただけただけでも嬉しいのに、このようなコメントまでいただけて涙が出るほどに嬉しく思います^^ こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2022年3月29日 21時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサ - 完結されて日にちが経ちますが、最近見つけたこの作品を読み出してとても面白くページを読み進める手が止まりませんでした。とても良い作品に出会えて嬉しいです。ありがとうございます。 (2022年3月25日 17時) (レス) id: 068b87fb6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年10月24日 22時
