168話 ページ18
マリィさんたちのご厚意で朝食をいただきせめてもと思い皿洗いを申し出ていた私は、最後の一枚の皿を洗い終えた。
水でぬれた手をタオルで拭いていると、ぱたぱたと可愛らしい足音が聞こえてくる。
「マリィさん。お皿洗い終わりました」
「ありがとうっ。お皿洗い任せちゃってごめんなさい」
「いえいえ。色々とお世話になったのですから、このくらいさせてくださいまし」
手を拭ったタオルをきちんと畳みながらそう言うと、マリィさんはその顔に小さく笑みを浮かべて見せた。
「さて、私はそろそろお暇させていただくとしましょう」
これ以上お世話になるわけにはいかないという思いから発した言葉なのだが、何故かマリィさんは慌てた様子でもう少しいたらいいと言ってきた。
いえ帰ります、いやもう少し。
そんな押し問答を繰り返していると、奥からネズさんもやってきて事情を知ると、彼もこの押し問答に加わった。
いつもの私なら押しが強いとそれに負けてしまうのだが、今回ばかりは負けるわけにはいかない。
人前でぶっ倒れるわ、人様のベッドを占領するわ、朝食までいただいてしまったのだ。
皿洗いだけじゃまったく釣り合わない、それどころか明らかに貰いすぎだ。
これ以上世話になるくらいなら、さっさとお暇したほうがいいに決まっている。
「やっぱりお暇します。これ以上ご迷惑をかけるわけにはいきませんので」
「いや、迷惑なんかじゃないんで本当に(まったくあのバカは、なにしてやがるんですか)」
こんな押し問答を続けていると、ピンポーンとこの場に似つかわしくない音が聞こえてきた。
その音にネズさんが「やっと来やがったか」と呟いた。
「来やがった?」
「あ、いえ。なんでもありませんよ。マリィ、出てもらえますか?」
ネズさんの言葉を復唱すると、彼はん˝んッと咳ばらいを一つこぼす。
そしてすぐに続けられたネズさんの言葉に、マリィさんはコクリと頷くとタッとその場を後にした。
軽やかに駆けていく彼女の小さな背中を見やると、ネズさんは視線を私へと移した。
「Aさん。本当にもう少しだけ時間をくれませんか?」
「……はぁ」
そう言うネズさんのあまりに真剣な目にあてられたのか、私は気の抜けたような返事をすることしか出来なかった。
ついてきてくださいと背を向ける彼に言われた通りついていくと、ついた場所は先ほど朝食をとったリビングだった。
リビングに足を踏み入れるとそこには、見覚えのある男の姿があった。
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長月シキカ(プロフ) - ミサさん» コメントありがとうございます!! レスが遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。多くの作品から当作品を見つけていただけただけでも嬉しいのに、このようなコメントまでいただけて涙が出るほどに嬉しく思います^^ こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2022年3月29日 21時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサ - 完結されて日にちが経ちますが、最近見つけたこの作品を読み出してとても面白くページを読み進める手が止まりませんでした。とても良い作品に出会えて嬉しいです。ありがとうございます。 (2022年3月25日 17時) (レス) id: 068b87fb6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年10月24日 22時
