163話 ページ13
「電話をかわったあの子は開口一番、私のせいで、ごめんなさいって言ったんだ。自分のせいで叔父さんの顔に泥を塗ってしまったんだって、五歳の子供がだよ。信じられるかい?」
カブはまるで自嘲するように、乾いた笑みをこぼした。
「"叔父さんが私を嫌いでも、私は叔父さんの事が大好きだから""たとえマイナーに落ちたとしても、私はずっとずっと叔父さんのファンだから"……そう涙声で伝えるAの言葉は今でも忘れられない。あの子のあの言葉があったから、僕はここまで諦めずに走ってこれたんだ」
「……あの、カブさん。さっきのカブさんがAさんを嫌うってのは」
「あぁ。後で兄に聞いたら、まだガラルにいた時に見知らぬ人から通りすがり間際に"お前みたいなの嫌われて当然だ"みたいな事を言われたらしい。直接じゃなかったからあの子も顔を覚えてないって」
「はっ?」
「あ˝ぁ?」
カブから発せられた言葉の衝撃さに、キバナとネズは思いっきり顔を顰め、嫌悪感をあらわにした。
ネズにいたっては、自慢の喉から震えあがるようなドスの利いた声が出ている。
誰だ、そんな事を言ったくそ野郎は。ガラルの地を二度と踏めねぇようにしてやろうか。
そんな言葉がありありと顔に出ている二人に、カブは毒気を抜かれながらも口を開く。
「まぁそんなことがあって、あの子は僕と比較されること、ひいてはポケモンバトルをすることがきっとトラウマになっているんだよ。現にあんな風になったあの子を見るのは始めてだ」
「……ほんっっっと、少し前の俺をぶん殴りてぇ」
「俺が殴ってやりましょうか。マリィの命の恩人になんてことをしてくれやがったのかって」
しなやかな指をポキポキと鳴らすネズに、キバナは頭を抱えたままこいつなら気絶するまで殴ってくるんだろうな、とどこか悟った目をする。
今にも腕を振り上げてキバナをぶん殴ろうとするネズの行動に待ったをかけたのは、カブだった。
「こらこら、ジムリーダー同士の無意味な喧嘩は規律違反だよ」
「チィッッ!」
「ネズお前、舌打ちがヤベェよ……てか、冗談抜きにオレはなんてことをしちまったんだ。謝っても許されねぇよな」
「……A君は、誠心誠意の謝罪を無下にするような子じゃないよ。ちゃんと理由を話して心から謝れば、きっと分かってくれる筈だよ。許すかどうかは彼女次第だけどね」
カブは真剣な表情でキバナと目を合わすと、キバナは何かを決意したように深く頷いて見せた。
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長月シキカ(プロフ) - ミサさん» コメントありがとうございます!! レスが遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。多くの作品から当作品を見つけていただけただけでも嬉しいのに、このようなコメントまでいただけて涙が出るほどに嬉しく思います^^ こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2022年3月29日 21時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサ - 完結されて日にちが経ちますが、最近見つけたこの作品を読み出してとても面白くページを読み進める手が止まりませんでした。とても良い作品に出会えて嬉しいです。ありがとうございます。 (2022年3月25日 17時) (レス) id: 068b87fb6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年10月24日 22時
