161話 ページ11
「記事を読み進めて見れば、どれだけバトルが酷いものだったのかとかいかにバトルセンスがないかとか、酷いことがつらつらと書かれていたよ。僕はあの時ほど激しく怒りを覚えたことはないよ」
あの時の怒りを思い出し、カブは眉に皺を寄せ手の中にあるグラスを割らんばかりに力を込め握りしめる。
怒りのままグラスを傾け、一気に残りのドリンクを飲みほしたカブはダンッと机にグラスをやや乱暴に叩きつけるように置いた。
「ハァ、ごめんね。ちょっとカッとなっちゃった……それから、その雑誌には似たような記事が幾多と載せられガラル中に販売された。その雑誌は当時そこそこ読まれていた雑誌だったから、その影響力は計り知れないものだったと思うよ。僕はそういうのに疎いから、あまり詳しくは分からないけどね」
深く息を吐いたカブは、空になったグラスを見つめる。
「僕はすぐにローズ委員長に報告して、その雑誌の絶刊と回収をしてもらうように頼んだ。だけど……」
「だけど?……まさか、雑誌は回収されなかった、とか?」
妙なところで言い淀んだカブに、ネズはそう問いかけると彼は小さく頭を横に振った。
「いや、すぐに雑誌は絶版、回収されはしたんだけど……一度ガラルに根付いた情報は、そう簡単に消えなかったんだ」
手持無沙汰からかカブは、空になったグラスを手に持ち中に残っている氷をクルクルと回した。
グラスが優雅に動くたびに、音の少ない店内にカラコロと氷がグラスに当たる音が響く。
「雑誌は全て回収されたけど、雑誌を読んでそれを鵜呑みにした人たちが嫌がらせをしはじめたんだ。あの子の家やあの子自身にね」
「な、なんでそんなっ」
「雑誌をよくよく調べたら、その記事を書いたのは以前僕をアポなしで取材しに来たマスコミだったことが分かってね。その時マスコミを追い返したから、今思えば僕に対する腹いせだったのかもね」
キバナの疑問に、カブはそう答えた。
彼から放たれた穏やかな口調とは裏腹に、その両目には確かな怒りの炎が浮かび上がっている。
しかし、怒りを覚えたのはカブだけではなかった。
「そんなの、完っっ全な逆恨みじゃねぇかっ!」
「それがマスコミ、いやマスゴミのやることなのか、くそったれがっ」
端正なその顔を怒りの色に染める二人に、カブは小さく「ありがとう」と告げる。
まるで自分のことのように怒ってくれる若きジムリーダーの二人に、カブは場違いにも嬉しさで胸が一杯になった。
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長月シキカ(プロフ) - ミサさん» コメントありがとうございます!! レスが遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。多くの作品から当作品を見つけていただけただけでも嬉しいのに、このようなコメントまでいただけて涙が出るほどに嬉しく思います^^ こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2022年3月29日 21時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサ - 完結されて日にちが経ちますが、最近見つけたこの作品を読み出してとても面白くページを読み進める手が止まりませんでした。とても良い作品に出会えて嬉しいです。ありがとうございます。 (2022年3月25日 17時) (レス) id: 068b87fb6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年10月24日 22時
