134話 ページ34
私は安全を確保するために、後ろの少女を押しのけつつ自分に向かって伸びてくる男の手をガシッと掴んだ。
「お嬢さん、そこから離れてくださいっ」
少女に向かってそう叫ぶと、少女は言うとおりによけてくれた。
男を投げ飛ばす範囲に少女がいない事を確認した私は、男の腕を片方の手でしっかり掴みもう片方の手を男の胸倉を掴んだ。
掴まれた男は"何しやがる"とか"放せッ"とかなんか喚いているが、私には関係ない。
私は、この変態クソ野郎を投げ飛ばすと決めたんだ。
男を逃がさないよう掴んだ両手にしっかりと力を入れ、私はスゥと息を吸い込んだ。
「ふっざけんじゃねぇぞ! この変態野郎がぁぁああああ!」
怒りのままに発せられた言葉を叫びつつ、私は男を床に叩きつけるように投げた。
ダァンッという鈍い音が辺りに響き、男のうめき声が微かに聞こえる。
無様に寝転んでいる男の体をひっくり返し、逃げないよう腕を捻り上げた。
「イデデデデッ!!」
「おい変態野郎、よく覚えておきなさい。女性は自分の気持ちをあげるため、そして好きな人に可愛いと、素敵だと言ってもらうためにオシャレをするんです……断じて、お前みたいな変態に触って欲しいわけじゃねぇんだよっ!!」
語尾を強めるのと同時に捻り上げた腕をさらに捻ると、男は痛みでさらに呻き始める。
このまま関節を外してやってもいいが、それだと私が過剰防衛になりそうなので捻り上げるだけにしといてやろう。
「まったく、いい年した大人なんだから自分の欲望ぐらいきちんと制御しておけっての……さぁ、お迎えが来たみたいですよ。せいぜい豚箱で反省することですね」
この場にいる誰かが呼んだジュンサ―さん達が慌ただしい様子でやって来るのが見えた私がそう告げると、男は自分の運命を悟ったのか力なく項垂れた。
ジュンサ―さん達は顔を真っ青にした男に手錠をかける。
私と少女はいくつか聞かれたが、周りの人たちが私達が完全に被害者であると証言してくれたおかげで早々に解放されることになった。
連行される男の背を見つつ、私はふぅと息をついた。
「あの……ありがとう。助けてくれて」
「ん? あぁ、いえいえ。お礼を言われるようなことは何も。逆に、ここまで大事にしてしまい、申し訳ありませんでした」
おずおずと自分にお礼の言葉を告げてくる少女に、私はそう言い頭を下げる。
もう少し要領が良ければ、ここまで大事になることななかったはずだ。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年9月18日 21時
