103話 ページ3
ちなみに、カズトモとミレナさんの事だが。
カズトモは、奥さんのミツカさんの実家があるカロス地方へ一緒に行くために数年前に退職している。
なんでも、ミツカさんのご実家のお店を継ぐらしい。
ミレナさんは、一昨年合コンで知り合ったという男性と結婚し寿退職をした。
最近、子供が産まれたと連絡が来て急いで出産祝いを送ったのも記憶に新しい。
まぁ、二人とは時々連絡を取っているが、二人共幸せそうで何よりである。
閑話休題
ということで、現在働いている同期は私とノボリクダリの三人しかいない。
これは来月も気合を入れるしかない。
「今年も新人が入ってくれたといえ、まだまだ忙しくなりそうですね」
「それでも頑張るしかありません。Aも体調にはくれぐれも気を付けてくださいよ」
「倒れるの、よくない」
「その言葉、そっくりそのままお二人にお返ししますよ」
なんて軽口を言い合いながらも、私達の目の前に執務室の扉が見えてくる。
私は一つ大きく息を吐き、言葉を紡いだ。
「さて、今日も一日頑張りますか」
「えぇ。お互いに頑張りましょう」
「僕も頑張るっ! Aも頑張ってっ」
「クダリもね。さぁお先にどうぞ」
そう言い、私は一歩下がり、二人を先に行くよう促した。
上司である二人を先に入室させる、これが私達の間では暗黙の了解であるため、促されるままノボリは先にドアノブに手をやり扉を開けた。
彼の後ろをクダリがついていき、最後に私が入室する。
「おはようございます」
「おはようっ」
上司の二人がそう声をかけると、執務室にいる人たちがまばらに「おはようございます黒ボス、白ボス」という声が上がる。
その声を聞きつつ、私は慣れた足取りで自分のデスクへと向かった。
＊
＊
＊
書類業務を終えた私はギアステーションのホームの見回りに向かっていた。
ホームを見回り、落し物や困っているお客がいないかを見ていると、キョロキョロとあたりを見渡す緑色が目に入った。
私は一つ息を吐いてから、その緑色に近寄り声をかける。
「また迷ったのですか? カズマサさん」
「あ、Aさん!」
私の言葉に、緑色の男――カズマサさんはしょぼくれていた顔をパァと明るくさせる。
カズマサは今年入社した新人で、仕事はよく出来る方だが道を覚えることが苦手なようで、よくこうしてギアステーション内を迷っていることが多いのだ。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年9月18日 21時
