117話 ページ17
公園でポケモンバトルをした日から翌日が経った。
あの後、泣き止んだタクマ君と別れた私は服を着替える為に一度自分の家へと戻った。
そして着替え終わると、本来の目的である買い物に向かったのだが、時間が結構たってしまったせいか、品物はほとんど売り切れだった。
まぁ、目当てだったポケモンフーズは幸運にも一つだけ残っていたから良しとしよう。
それに困っている人を助けることが出来たのだ。それだけでも私は満足である。
まぁそんなこんなで休日を終えた私は、いつものように仕事場へと向かう。
道すがらに会う先輩や後輩に挨拶をしていると、前方から私に向かって駆けてくる人影が見える。
その人影からは自分の名前が呼ばれているのに気づいた私は、その人影へと視線をやった。
「Aさん! おはようございますっ」
「あぁ、カズマサさんですか。おはようございます。今日は迷子にならなかったようですね」
「いえ、さっきまで迷ってたんですけど、クラウド先輩にここまで連れてきてくださったんですっ」
「あ、そうですか」
何故かにっこりと笑みを浮かべてそういうカズマサを見ながら、私は心の中でクラウド先輩に合掌する。
今日会ったら、先輩にコーヒーの一つでも奢るとしよう。
なんてことを思っていると、カズマサさんが嬉々とした表情で私に詰め寄ってきた。
「それよりAさんっ! 昨日のポケモンバトル凄かったですね!」
「昨日? まさか、見てたんですか?」
私がそう問うと、カズマサさんは元気よく「はいっ!」と返事をする。
そんな彼を目にして、私は片手で顔を覆い天を仰いだ。
比喩とかそういうのではなく、マジである。
まさか、あんな場面を目撃されていたとは……。
叶うことなら、すぐにでもカズマサさんの頭からその記憶を消し去ってやりたい。
私がそんな事を思っているとも知らずに、カズマサさんは言葉を続ける。
「僕、昨日非番でして、なんとなく散歩してたんです。それで、あの公園でバトルしている人がいるなぁと思って見てみたら、バトルしてたのはAさんでビックリしましたよ」
「まぁ、成り行きというかなんというか……即刻忘れていただければ幸いです」
そう言って昨日の事を思い出しているのか若干興奮気味に話しをするカズマサさんに、私はそう言葉を返す。
私は、あの場面を貴方に目撃されていたことにビックリだよ。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年9月18日 21時
