２９８標的 別れの段 ページ48
六道さんは私の方に体ごと向けると、いつもの笑みを浮かべ私の目を見る。
「クフフ……元気そうですねA」
「六道さん。あなたも元気そうで何よりです。そういえばクロームちゃんには会いましたか?」
「えぇ。前よりも強くなっていたようで嬉しい再会でしたよ」
特徴のある笑い方をする六道さんに、私もつられて笑みをこぼす。
すると、目を細めて笑っていた六道さんは目を開き私を見つめ始めた。
「貴方の過保護すぎる方の予知が見事、当たりましたよ。一応感謝の言葉を述べておきましょう」
「あぁ、リング争奪戦のとき天狐が言ってたアレだね……出所、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
目を伏せながらそう言う六道さんに、私は十年前とあまり変わってないなと密かに心の中で思った。
そんな他愛もない会話をして、私は他の人たちの怪我を見る為彼と別れの言葉を口にする。
「じゃあ六道さん。お元気で」
「えぇ、君も」
そう言い、彼に軽く手を振り私は彼の横を通り過ぎた。
この時代でやることを全て終わらせた私は、入江さんが待つ白い装置の所に向かう。
私が来る頃には、過去から来た全員が既に揃っていた。
「おっせーぞA!」
「まぁまぁ。待ってたぜA」
「ごめんなさい。怪我をした皆に薬とか渡し歩いてたら思った以上に時間かかっちゃって……」
本当は、ザンザスさんやベルさん達に捕まっていたんだけど、流石に黙っておこう。
ベルさんはいつもの笑みを浮かべながら私の頭をワシワシしてくるし、フランさんは幻術使って脅かしていくるし、ザンザスさんにいたっては顔を合わせた途端だ、抱きしめてくるし……。
あぁ思い出すとまた顔が熱くなってきた気がする。
「A、顔が赤いけど、どこか調子でも悪い?」
「へっ!? いや、ぜんっぜん元気だよ! ほら、京子ちゃん達も待ってるし、過去に帰ろうよ」
「十代目を差し置いて、なに最後に来た奴が仕切ってやがんだ! てめーは!!」
「す、すみません……」
獄寺君に怒られてしまい、シュンとしてしまう。
すると、怒りすぎたのかと思った獄寺君が、ものすごく小さな声で「悪ぃ」と呟いた。
あの獄寺君が沢田君以外に自分から謝るなんて……彼の精神も成長したんだなぁ。
「じゃあタイムワープを始めるよ! 別れを惜しんだらキリがないからね! アルコバレーノは過去のマーレリングを封印してすぐにここへ戻ってくる予定だ」
そういう入江さんに全員は彼の方に視線を向ける。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年6月4日 0時
