297標的 命がけで作られた平和の段 ページ47
「事情はすべて分かってるぜ。おしゃぶり状態の俺達にユニが炎を通して教えてくれたからな」
「ユニは白蘭が倒された場合、世界にどのような影響が起きるのかも、我々に教えてくれました」
雲雀さんによく似た赤いおしゃぶりをつけた赤ちゃんが、その影響について語る。
白蘭さんがマーレリングを使って起こした悪事は、全パラレルワールドの過去を遡って抹消される。
つまり、白蘭さんが起こした悪事が最初っからなかったことになるのだという。
それは白蘭さんの手によって命を奪われた人たちも、タヒんだことすらなかったことになるという意味でもある。
「親父が……」
「良かったね、山本君」
「あぁ!」
山本君が泣きそうなのを必死でこらえるような、されど嬉しそうな笑みを浮かべる。
良かった、本当に良かった。
「で、でもまた白蘭みたいな奴が出てきて、マーレリングを使いだしたらどうしよう……」
「それを防ぐために、ユニは命をかけたのです」
赤いおしゃぶりをつけた赤ちゃんが言うには、ユニさんは過去のマーレリングを永遠に封印する奥義を彼らアルコバレーノに託したのだという。
そういえば、ユニさんは"平和な過去"へ帰れるって言ってたっけ。
彼女は命がけで、永遠の平和をつくろうとしてくれたんだ。
ユニさんの優しさを受け取った沢田君は空に向かって顔を上げる。
その顔は、まるで"ありがとう"と言ってるように見えた。
「さぁ今度は君達の願いを叶える番だよ!」
松葉杖をついた入江さんの声に、私たちは思い出した。
そうだ、私たちの最終目的は"過去に帰る"ことだった。
「皆……過去へ帰ろう!!」
笑みが戻った沢田君の声が、どこまでも広がる清々しい空に吸い込まれていった。
ふらつく私を兄さん達が支えながら、一度私達はボンゴレアジトに帰ることになった。
すぐに帰るには皆傷つきすぎた為、過去へ帰るのは翌日に決まる。
ディーノさんやヴァリアーの人たちもボンゴレアジトに寄ることになり、アジトの中は少しだけ騒がしい。
しっかり休んだ翌日、気力体力を回復させた私は傷ついた人達の治療をするとともに最後の挨拶をしに向かった。
怪我の酷いスクアーロさんやディーノさん達に伊作兄さんから処方された鎮痛剤や打撲に効くシップなどを渡し歩いていると、廊下である人物に出会った。
廊下の壁にもたれるように背中を預けている六道さんに、私は自然に口元が緩むのを感じた。
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年6月4日 0時