２９６標的 最後の一撃の段 ページ46
「君達のくだらないお友達ごっこにせいで散った……この意味が、分かっているのか!!」
彼がそう吠えた瞬間、沢田君は怒りのはらんだ目で白蘭を睨みつけた。
その瞳には小さな涙の粒がキラリと光る。
「お前がこんな世界にしたから、ユニはﾀﾋんだんだ!! 俺はお前を許さない!!! 白蘭!!!!」
沢田君の怒りに比例するように額の炎が大きく燃え上がる。
そんな彼を嘲笑うかのように、白蘭さんは口を開いた。
彼の口から出るのは、全てユニさんを侮辱する言葉ばかり。
そんな言葉を続ける白蘭さんに、沢田君の怒りの炎はさらに燃え上がる。
白蘭は自分の足から根のような物を出し体を固定させる。
おそらく、強力な一撃を放つ気なのだろう。
その一撃に対抗するよう、沢田君はイクスバーナーを放つ構えを取る。
二人のすさまじい炎の炎圧で彼らを囲う結界に少しづつ亀裂が入り、壊れていく。
「あのおしゃぶり付きの人形は僕に最高のオモチャを与えてくれたのに!!」
「それ以上ユニを侮辱するな!! 白蘭お前だけは!!」
「け、結界が破れる!!」
「消えろ!!!」
「くらえ!!」
白蘭さんが繰り出す黒い炎と、沢田君が繰り出すオレンジの炎が激しくぶつかり合う。
始めは同じくらいの勢いだった炎は、徐々に白蘭さんの黒い炎を沢田君のオレンジの炎が上回っていく。
そして、沢田君が繰り出した高出力の大空の炎は、白蘭さんの体を包み込み辺りには彼の叫び声がこだまする。
白蘭さんの体が消滅しかける寸前、今まで口を開けていた彼の口がスッと弧を描いたように見えた。
笑ったのか……?
確かめようにも、彼は消滅してしまった為それは構わない。
六道さんの時の様に、彼の悪意に満ちた心が沢田君の大空の炎で少しでも浄化されたのだろう。
そう思うことにし、私は沢田君の方を見た。
白蘭さんを倒した事により、周りは歓喜に包まれるが、沢田君だけは浮かない顔をしている。
それもそうだ。
ユニさんや、γさん、それに山本君のお父さん……この戦いで、私たちは多くの犠牲を出し過ぎてしまったのだから。
心優しい沢田君には、それが辛いのだろう。
「この戦い、本当に勝った意味があったのかな?」
「大アリに決まってんだろコラ!!」
そう疑問の声をあげる沢田君を叱咤する様な声がどこからか聞こえてくる。
声のする方を向くと、おしゃぶりが光り出しその光の中からリボーン君と同じ体系の赤ん坊たちが姿を現す。
ついに、最強の赤ん坊――アルコバレーノが復活したのだ。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年6月4日 0時
