295標的 大空の少女の消滅の段 ページ45
それから、バジルさんの匣兵器により匣コンビネーションシステムを発動させ、全匣兵器の炎が雨イルカ(デルフィーノ・デイ・ピオッジャ)に集まる。
このすさまじい炎なら、あの結界を破れるかもしれない。
全匣兵器の炎を纏った雨イルカの先にバジルさんが乗り、結界に向かって真っすぐ向かっていく。
しかし、あれだけの炎でも結界を完全に破ることは出来ず一時的な傷、それも人が一人は入れるか否かのヒビを与えることが出来なかった。
「おい」
「!? γさん?」
「お前の力で俺を、あのヒビまで連れて行ってくれ」
「! ……分かりました。鎌鼬!」
"あ、あぁ!"
γさんの思惑を感じ取った私は、鎌鼬に指示を出しγさんを結界に出来たヒビに向かって飛ばした。
現役マフィアである彼は見事なバランス感覚で、風に乗り結界に出来た穴の中からユニさんがいる結界の中へと入って行った。
「よぉ姫」
「γ」
「やっと会えたのに、またすぐいっちまうなんて、水くさいぜ……俺の炎も使ってくんねーか?」
γさんはゆっくりとユニさんのもとに近寄り、優しく彼女を自分の胸元に引き寄せる。
彼女は、いきなりのことに驚き目を見開いてγさんを見る。
彼はユニさんの耳にそっと何かを伝えると、ユニさんは大きなその目からボロボロと涙を流しながらも、心の底から嬉しそうに笑い服だけを残し消えた。
命の炎をおしゃぶりに全て注入したために起こった、肉体の消滅だ。
「γ! ユニ!!」
沢田君はすぐにユニさん達がいた場所に駆け寄り、持ち主のいないおしゃぶりを手に取る。
ユニさんが命を賭して注入されたおしゃぶりからいまだにアルコバレーノは復活しない。
まさか、ユニさんの賭けは失敗したのか……?
そう思ったが、リボーン君失敗とは思わずまだ時間がかかるのだ、と言った。
ユニさんとγさんのタヒに、周りは悲しみの色に包まれるがその空気を断ち切るかのような白蘭さんの憤りの声が響く。
この時の白蘭さんの顔は、まさに絶望の色に染まりきっていた。
「やっと見つけたパズルの最後の一ピースがタヒんじゃったよ……全ておじゃんじゃないか」
タヒんだユニさんの事を物の様に言う白蘭さんは侮蔑の目で沢田君を睨む。
そして、自分がトゥリニセッテを覚醒させ自らが覇者になるなどと自分勝手な願いがついえたことを憤り、沢田君に向かって吠えた。
11人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年6月4日 0時