292標的 海・貝・虹の詩の段 ページ42
いきなり泣き始めた私に、山本君達の焦る声が耳に届く。
それに何でもないと答える前に、懐かしい声が私の耳をくすぐる。
"相変わらず、お主は泣き虫でござるな"
"全くだ……"
"究極に変わっておらんな"
"懐かしいんだものね"
"僕は君が泣こうが興味はないけど、さっさと泣き止んだら?"
"ヌフフ。今は泣く時ではないでしょう"
「雨、月……G……ナックル……ラン、ポウ……アラウディ……スペード……」
今まで口にしたことのないその名前を口にすると、心の奥底から懐かしさが込みあがりますます涙が頬をぬらす。
"A、もう涙を流すんじゃない"
「……ジョット……えぇ……」
かつてのボスであるジョットの言葉に私は頬につたった涙を袖で拭い取る。
私が泣き止んだことに納得したのか、姿なきジョットの声が辺りに響いた。
"
「も、紋章が!!」
沢田君のグローブの甲から紋章が浮きだし、その紋章の向こう側に先ほどから声だけ発していたジョットが姿を現す。
そして、沢田君のグローブとジョットのグローブが紋章を挟んで合わした。
"枷をはずしてやろう"
光り輝く紋章を目にしていながらも、白蘭さんは余裕に笑みを見せる。
「何の遊びだい? 綱吉クンのソレは、誰なのかなその男は?」
「ボンゴレファミリーの初代ボス、ボンゴレ
ユニさんの言葉に白蘭さんはジョットの姿をホログラムだと言うが、ユニさんはその言葉を否定し今の状況をボンゴレリングの"縦の時空軸の奇跡"と呼んだ。
「生まれた時から私の記憶に焼きついているこんな詩があります。"海はその広がりに限りを知らず、貝は代を重ねその姿受け継ぎ、虹は時折現れはかなく消える"」
ユニさんが言うには、この詩はトゥリニセッテのそれぞれの大空の在り方を示しているという。
どこまでも広がる
代を重ねる
"さぁ
そう言ったジョットの言葉に、ディーノさん達は驚きを隠せずにいた。
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年6月4日 0時