２７８標的 修羅開匣の段 ページ28
敵の拘束が解かれた私は、重力に逆らうことなく真下に落ちていく。
落ちていく恐怖で悲鳴をあげた時、落ちていく私を空中で受け止めたのは先ほどまでトリカブトさんと戦っていた留三郎兄さんだった。
「大丈夫か! A」
「私は大丈夫。あっ、ユニさん!?」
「アルコバレーノの少女ならあそこだ」
そう言いながら顔を向ける留三郎兄さんのほうを向くと、黒いスーツを身に纏った金髪でオールバックの男性がユニさんを横抱き――つまりお姫様だっこをしていた。
心なしか、ユニさんの目に小さな涙の粒が生まれている。
「姫様!!」
「お守りするぜ!!」
「野猿……太猿!!」
ユニさんとユニさんを抱えた男性を守る様に嵐の炎を纏わせた大きな鎌を持った二人組が立ち塞がる。
しかし、トリカブトさんの攻撃であっという間に攻撃を受け倒されてしまう。
二人を倒した敵は、真っ直ぐにユニさんの元へと突っ込んでいく。
「烏天狗! ユニさんとあの男性を守って!」
「あぁ」
そう言い、留三郎兄さんはユニさん達の前に立ちふさがる。
「Aさん!?」
「なんだ!? こいつ!?」
兄さんの後ろから声が聞こえるが、それに兄さんが応えることはない。
敵の攻撃が私達に当たろうとした瞬間、トリカブトさんがのけぞった。
彼の攻撃を止めたのは、ﾀﾋぬ気化した沢田君だった。
「沢田君……」
私の小さな声は彼に、届いていたらしくチラリと私の方を振り向くと小さく頷いて見せる。
沢田君の意思を理解した私は、ここは彼に任せることにした。
それから、修羅開匣したトリカブトさんの強力な幻覚により天地がつかめない状態に陥ってしまう。
しかし、そんな危機的状況を救ったのはクロームちゃんだった。
クロームちゃんのボンゴレ匣が
私は、そんな彼女の魔レンズを見て何処か懐かしい気持ちになった。
実際には見たことないはずなのに、遠い昔にそれを使うＤ・スペードの姿が思い出される。
これも、己の魂に刻まれた記憶の一部なのだろう。
クロームちゃんや皆の力を合わせ、何とかトリカブトさんを撃破しあとの二人も撃退した私達は一度地上に降りる。
少々騒ぎ過ぎた私達は、騒ぎになる前にこの先にある森へと向かった。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年6月4日 0時
