２７６標的 謎の男性の段 ページ26
無事"川平不動産"にはついたが、そこにいたのはハルちゃんの言っていたおばあさんではなく短髪の男性だった。
自らを川平のおじさんというその男性は何故か真六弔花の事を知っていたが、私達を部屋の中に匿ってくれた。
追いついてきたザクロが私達が隠れている不動産屋の扉を荒々しく開けるが、川平さんが持っていた箸で人という字を空に書くと、ザクロは勢いよく去っていった。
一体、この人は何をしたんだろう。
結局川平のおじさんは自分が何者かを説明することなく、旅とやらに出ていってしまった。
「A、アイツが何者か分かるか?」
「えっ? 私の知り合いの中にあんな人はいないけど……皆は分かる?」
"……さぁな"
「そっか……天狐でも分からないみたい」
「そうか。まぁ、奴のことはあとだ。雲雀がデイジーを倒した事で当面の危機は去った。これからのことを話しあわねーとな」
リボーン君のその言葉に全員は力強く頷く。
話し合いの中、スクアーロの安否が気がかりな山本君とそれぞれアジトに用があるビアンキさん、スパナさん、ジャンニーニさんの計四人がアジトに戻ることになった。
「山本君、スクアーロさんに会ったらこれを」
「ん?」
私は空に浮かぶ伊作兄さんからいくつかの丸薬の入った袋を受け取り、山本君の手の平に乗せる。
傍から見たら、何もない所から袋が出たように見えたからか沢田君達から驚きの声が小さく上がる。
「これは?」
「葛の葉特製の丸薬だよ。スクアーロさんがどんな状態か分からないからとりあえず、鎮痛成分が多く含まれているのを渡しておくから、彼を見つけたら飲ませてあげて」
「あぁ、必ず飲ませるぜ!」
「一応アジトに戻る組の人たちの分も入ってる。あと、一度に飲むのは三粒までだよ。それ以上飲むと逆に体に悪いから」
「分かった。サンキューなA」
そう言いニッと笑って見せる山本君に私も笑みで返す。
その後、ビアンキさんに伊作兄さんが出してくれた簡単な医療セットを渡して超慎重に送り出した。
辺りを慎重に警戒していた時、先程まで寝ていたランボ君がいつの間にか起きたようで、いつもの調子でガラッと扉を全開にする。
そんな様子のランボ君に獄寺君はこめかみに血管が浮きでるぐらいにイラつきながらランボ君を投げ落とす。
そんないつもの調子の二人に、緊張していた心がホッと緩んでしまう。
そしてユニさんを私達に託して四人は不動産を後にした。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年6月4日 0時
