２７５標的 不動産屋への段 ページ25
アジトから脱出してこれからのことを考えていると、ハルがちゃんが一つの案を出した。
それは、ハルちゃんの知り合いのおばあさんが経営している不動産やに行くという案だ。
沢田君はえーというが、リボーン君は盲点化もしれないと、ハルちゃんの意見に賛同する。
「とにかくこの人数で移動しては目立つわ」
「じゃあ私の妖怪達は姿を消してもらうとして、何グループかに分かれま」
そう言いかけた瞬間地響きがしはじめその音は徐々に激しさを増していく。
"マズいぞ! あと数秒後にアジトが爆発する"
「!! 皆伏せてっ!」
私はこれから来るであろう爆風から皆を庇うため、自分の影を使って兵助兄さんに影の壁を作って貰うよう頼む。
黒く大きな影の壁から私の足元からそびえたった瞬間、激しい爆音と爆風が私達を襲った。
「皆さん大丈夫ですか!?」
「ひいぃぃ! だ、大丈夫だけど一体どうなってるのー!?」
「多分アジト内で爆発が起きたんだと思う!」
「あいつらどんな戦いをしてやがんだ! 何がゆっくり静かに戦いてぇだ!!」
獄寺君の言葉に、少しだけ共感していると耳に付けた無線からノイズの混じったスクアーロさんの声が聞こえてきた。
その声は、いつものボリュームも力強さも感じない弱ったような声だ。
その声で、スクアーロさんはアジトから少しでも遠くへ逃げろと告げた。
最後のクソガァって言ったのはおそらく戦っていたザクロさんに言った言葉だろう。
「俺……やっぱ戻るぜ!」
「山本君!」
「バカ武め!」
私が止めるより前に、リボーン君が山本君の頬を叩く。
そして、スクアーロさんがﾀﾋぬ気で稼いだ時間を無駄にするのかと説き伏せた。
しかしどうしてもスクアーロさんの事が心配なのか、その顔にいつもの笑みはない。
「山本君。スクアーロさんならきっと大丈夫だよ。あの人の強さとタフさは弟子の貴方が一番よくわかってるはずでしょ」
「A……あぁ、そうだな!」
「沢田君!」
「あ、うん! ハルその不動産屋はどこにあるんだ!?」
「五丁目なのでこのすぐ近くです!! 先の商店街を右に曲がった所に!!」
そう言ったハルちゃんを先導に、不動産屋に向かう。
走りながらチラリと後ろを見ると、アジトの出口がある工場跡地の方から赤い炎が上がるのが見えた。
"あのザクロとかいう男がこちらを探し始めたな"
「急いでユニさんを安全な場所に」
姿を消した仙蔵兄さんの声に私は小さくそう答え、走るスピードを速める。
不動産屋まであと少しだ。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年6月4日 0時
