268標的 真実の告白の段 ページ18
入江さんはその無数にあるパラレルワールドの中に自分の夢だったミュージシャンの未来もある筈だと思い、学校の教科書を燃やしたり進路指導票に"ミュージシャンになれなきゃタヒんでやる!!"と書き込んで、二度目のタイムトラベルをした。
二度目のタイムトラベルで行った未来では、ミュージシャンとして働いていたがお金のトラブルを抱えておりギャングから追われている身だった。
一目散に店から逃げ出した入江さんはそこで再び白蘭さんと出会った。
この時であった白蘭さんは、頭痛と共に別の未来で出会った入江さんの事を思い出したのだ。
これが白蘭さんの能力の目覚めだった。
それから三度目のタイムトラベルをすると、ついた未来の世界は荒廃し戦争で焼け野原となっていたらしい。
勿論、それは白蘭さんの仕業だった。
その後も、入江さんは出来る限りの変化を過去で起こし何度もタイムトラベルを試みたが、どの未来でも世界は荒廃してしまっていた。
つまり、全ての世界が白蘭さんに支配されてしまっていたという事だ。
これらの話を聞いた沢田君が、白蘭さんの能力について尋ねた。
「……どんな人間も他のパラレルワールドにいる自分の事は知る術もないし、交わったり関わったりすることはない。だが白蘭サンは同時刻のパラレルワールドにいる、全ての自分の知識と思惟を共有できるんだ」
私には入江さんのその言葉がとても恐ろしく感じたが、笹川先輩はどうにも分からないようだ。
そんな笹川先輩に私は、出来るだけかみ砕いて説明する。
「つまりですね。白蘭さんはこの世界に無くて別の世界にはある情報や技術を、この世界に持ち込み使用することが出来るというわけです……この解釈で合ってますか? 入江さん」
「あ、あぁ……簡単に言えば、そうなるよ」
「パラレルワールドの情報を使えば、誰よりも有利に生きられる。この世の中情報に勝る武器はねぇからな」
「誰よりも、有利に……」
「ありえねぇことも起こせるってわけだ」
「そうの通りだ……白蘭サンは他のパラレルワールドで得た知識を使い、様々なことを起こしたんだ。匣兵器の開発もそれの一つだよ」
入江さんは、自分がタイムトラベルを繰り返しているうちに過去の白蘭さんにまで能力に気付かせてしまったと告白した。
となると、白蘭さんは十年前からその能力を使えたことになる。
入江さんを責めるわけではないが、その間にどうにか出来なかったのかな?
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年6月4日 0時