２６６標的 決まった勝敗の段 ページ16
「ぐあ゛ッ!!」
「つぅッ!!」
支えを失った入江さんは勢いのままズザァッと地面を滑る。
真っ赤な鮮血が灰色のコンクリートに塗られるのを見て、私の頭は真っ白になった。
「正一!!」
真っ白だった頭を覚ましたのは、沢田君の鋭い声だった。
今自分がすべきことを理解した私は、すぐさま倒れ込んでいる兄さん達と入江さんの元へ駆け寄ろうとするが、チェルベッロ機関に止められる。
「入江氏の標的の炎を厳密にチェックいたしますのでお下がりください」
「っ!!」
私は何も出来ない歯痒さに、思わず顔をしかめる。
そんなおり、耳に付けた無線から山本君の声が聞こえてきた。
「ツナ!! こっちも倒したぜ!!」
「倒したって……という事は、引き分け?」
「野球バカにしては、よくやったじゃねーか」
いつもより弱った声色で、そういう獄寺君にﾀﾋぬ気化をといた沢田君が駆け寄ってくる。
「獄寺君にA! 無事だったんだね!!」
「申し訳ありません十代目!!」
「沢田君……」
「よかった!! 本当によかった!!」
「俺達なんかより……」
「そうだ、入江さんが!」
沢田君の無事を安堵するが、この中で一番重症であろう入江さんの事を思うと喜んでいる場合ではない。
お腹から大量の血を流す入江さんを冷静に分析したチェルベッロ機関が、彼の炎を消滅とみなし彼の傍から離れた。
「正一君!! しっかりして! ﾀﾋんじゃだめだ!!」
彼の傍で必死に呼びかける沢田君をよそに、敵側のターゲットであるデイジーさんのチェックをしていたであろうチェルベッロ機関の声で、敵側の標的の炎を消滅とみなした。
これで、引き分けかと思ったが何故かデイジーさんが生き返ったのだ。
「デイジーは"
そう言い冷ややかな笑みを浮かべる桔梗さんに、私は小さく恐怖した。
それをよそに、チェルベッロ機関は抑揚なない声色で宣言する。
「これによりチョイスバトルの勝者が決まりました。勝者は……ミルフィオーレファミリーです!!」
「正一君しっかりして……!! 正一君…!? 正一君―――!!!」
辺りに、沢田君の悲痛な声がこだまする。
いくら妖怪でも、ﾀﾋ者を蘇らせることは出来ない。
それを理解している私は、自分の無能さを呪った。
しかし、何かに気が付いた兄さんがソッと耳打ちをする。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年6月4日 0時
