２６４標的 妖怪の弱点の段 ページ14
変化してもらい狼となった守一郎兄さんの背中に掴まり目的地を目指す私達に、仙蔵兄さんが話しかける。
「Aに守一郎。相手の雲と基地ユニットとの距離が二キロを切るぞ」
「了解、送り犬もっとスピードを上げて!」
「ワオンッ!」
守一郎兄さんは一鳴きして、さらにスピードを上げる。
振り落とされ無いように、私はしっかりと守一郎兄さんの毛を握りしめた。
「Aこのまま行けば、相手の雲と衝突するがどうする?」
「……送り犬、いい?」
「ワウッ!」
「分かった。このまま全速前進し、敵に突進する!」
仙蔵兄さんの予知を聞き、そう指示を出すと守一郎兄さんはまた一段階スピードを上げた。
延々と立ち並ぶ高層ビルを抜けた瞬間、仙蔵兄さんの予知通り相手の雲、桔梗さんにぶつかった。
送り犬に全速力で頭突きされた桔梗さんは、急なことで手も足も出なかったのかそのまま吹っ飛んでいったが、流石は真六弔花。
空中で華麗に体勢を整え、私を睨みつけている。
「ハハン。あのモスカを全て撃破するとは……化け物という異名は伊達ではないようですね」
「それはどーも。基地には向かわせませんよ!」
私はバッと片手を前に突き出すと、各々武器を構えた兄さん達が桔梗さんに向かって突撃する。
「ほぅ。これが、妖怪とやらですか……確かに普通の人間では太刀打ちできませんね」
兄さん達の攻撃を避けながら、桔梗さんは涼し気にそう言う。
この人……強い。
「チィッ! ちょこまかとハエみたいな野郎だな!」
「流石は人ならず者……ですが、これならどうです?」
そう言い懐から数枚の何かを取り出した桔梗さんは、ソレらを兄さん達に向かって投げつけた。
兄さん達はすぐにソレを避けたが、反応の遅れたタカ丸兄さんの腕にソレが張り付いた。
その次の瞬間、タカ丸兄さんが悲痛な叫びをあげた。
「あ゛あ゛ぁ゛ぁぁ!?」
「!? 髪切りッ?」
「ハハン。流石は我らが使える悪魔の力ですね」
「! まさか……」
「そのまさかですよ、妖怪の姫君。先ほど私が投げたこれは、白蘭様の血液が滲み込んだただ布です。ですが、ただの布でも妖怪にとっては劇薬に等しいようですね」
苦しそうに呻くタカ丸兄さんの肩を抱え、冷たく見下ろす桔梗さんを睨みつける。
まさか白蘭さんの血液にも浄化の力を宿らせるなんて……。
「ハハン、では失礼します」
「あっ! ま、待ちなさい!」
私の声に従うはずもなく、桔梗さんは真っ直ぐ基地ユニットの方へ向かっていく。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年6月4日 0時
