２６３標的 無事撃破の段 ページ13
Aを映していたカメラが一瞬白むほどの光が徐々に消えていき、辺りには黒い煙が立ち込める。
「Aちゃん、大丈夫なのかな……?」
「ま、まさか……」
「馬鹿言うんじゃないの京子、ハル。あの子がそう簡単にやられるわけないわ」
京子とハルの肩を抱きながらそう励ますビアンキも、その顔に不安の色を滲ませている。
「クッ! 相打ちか……」
「いや、よく見ろ」
悔しそうに歯を噛み締める了平に、リボーンがカメラを見るよう促した。
その場にいた全員がカメラに目を向けると、モスカの残骸を避けながら咳き込んでいるAの姿がカメラの映像に映されていた。
――――――――――――――――――――――――
「ゲホッゴホッ! あー、ﾀﾋぬかと思った。"憑依解除"」
私は頬についた泥汚れを拭いながら、そう口にする。
すると、今まで軽かった自分の身体ががズンと重くなったように感じた。
いや、兄さん達の妖力で身体が変化していた為、元の私の身体に戻ったんだ。
元の身体に戻ると、今までの痛みがドッと私に襲いかかる。
身体に負担のかかる"憑依"の代償は痛みとなって帰ってくるのだ。
「うっ……」
「Aほら、鎮痛剤だよ」
「ありがとう」
私は伊作兄さんから受け取った丸薬を受け取り、ゴクリと飲みこむと襲っていた痛みがスゥッと消えた。
さすが、伊作兄さんの薬だ。凄い効き目。
「よし! すぐに基地ユニットの守備に……ん?」
すぐに行動に移ろうとした時、耳に付けた無線から山本君の焦り声が聞こえてくる。
一体、どうしたのだろうか。
「どうやら、白蘭の奴が山本に負けた幻騎士を見限ったようだな」
「見限った? 仲間を?」
「そう言う男だ。汚い人間の中でも奴は群を抜いている」
そう冷静に分析する仙蔵兄さんに、私は小さな怒りを覚える。
胸の内の怒りを抑えていると、無線から沢田君の声が耳に入ってくる。
「"勝とう……世界の為とか、トゥリニセッテとか言われてもピンとこなかったけど……白蘭が皆を酷い目に遭わせてるのは間違いないんだ!!"」
「沢田君……」
姿は見えないが沢田君の真剣みを帯びたその声で、彼が本心を口にしているのが分かる。
それから、入江さんの声も聞こえ沢田君達に指示を出していく。
「秋月さんの方はどう?」
「はい、モスカ達は無事撃破しました。これから獄寺君のもとに直行します」
「頼むよ」
「よし、皆すぐに獄寺君の所へ急ごう!」
私の声に、兄さん達は力強く頷いた。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年6月4日 0時
