２６２標的 続く攻防の段 ページ12
不自然に揺れる砂煙の中から、モスカが物凄いスピードで此方に向かってくる。
モスカの手は鋭い槍に変化しており、このままだと間違いなく串刺しになるだろう。
そうなる前に、私は急降下して地面に降り立つ。
私を狙って上空を飛んだモスカは、空中で方向転換し再び私を狙い始めた。
「経凛々!」
"この私に任せろ!"
滝夜叉丸兄さんの声が聞こえなくなると、私の手の中には長い経文が握られていた。
その経文をモスカに向かって投げ縄の要領で投げると、教文はモスカの体に絡みつく。
モスカは経文を引きちぎろうと後ろ向きに炎を噴射するが、この経文が切れることはない。
私はまるで凧揚げ状態のモスカを思いっきり地面に叩きつけた。
ゴッシャァッという激しい衝撃音が私の鼓膜を震わせる。
「不知火、お願い!」
"ＯＫ!"
そう言った三木エ門兄さんは私の両手を変化させ二丁の拳銃になった。
私は二丁拳銃を地面にめり込んでいるモスカを挟む両脇の高層ビルに向かって引き金を引く。
「爆破!」
拳銃独特の音が耳に届いたのを実感した瞬間、両脇にそびえ立っていた高層ビルがモスカに向かって崩れ倒れていく。
そして、耳が痛いくらいの轟音が当たりに響いた。
「……本当に人がいなくてよかった。もしいたら事故なんてもんじゃすまなかったよ」
"A、安心するのはまだ早いみたいだぜ"
「えっ!? まだ動くの?」
普通の機械ならもう壊れてもいいと思うが、とにかくさっさと終わらせてしまおう。
下の方から変な機械音がする為、もう壊れる寸前なのだろう。
それなら多少リスクはあるが、地に足が付いている状態で終わらせてしまおう。
「影法師、モスカの影を止めて!」
"分かったのだ!"
兵助兄さんはそう言い、今にも飛ぼうとするモスカの動きを止めてもらう。
その間に、私はモスカの丁度真上の辺りまで飛ぶ。
「鵺、雷獣……行くよ!」
"うん!"
"いいぜ!"
雷蔵兄さんと八左ヱ門兄さんの声を聞いて、私は利き手に拳を作り最大のスピードで急降下する。
急降下しつつ拳を振り上げ、モスカの頭部に命中させた。
高い所からの衝撃と鵺の腕力でモスカの体が半分くらい地面に埋まる。
そして、私の拳から雷獣のカミナリがモスカに向かって放出された。
「放電!!」
私のその言葉が言い終わった瞬間、目の前がカッと明るくなる。
そして次の瞬間高い電圧でショートしたモスカが、激しい音と光を放ちながら大爆発した。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年6月4日 0時
