153標的 帰らせての段 ページ3
「……言ってみろ」
「もし、仮に、万が一、この戦いで貴方が敗けた時、先ほどの約束はなかったことにしてください」
「……いいだろう。あのモドキが勝つような事があれば、てめぇを諦めてやる」
「本当ですか?」
「あたりめーだ。俺は嘘はつかねぇ」
空のグラスにお酒を注ぎながら、男は確かにそう言った。
本当に信じていいんだろうか。
「分かりました。貴方が約束を守ってくれると言うのなら、私も約束は必ず守りましょう」
私がそう言うと、男はふんっと鼻を鳴らしお酒を煽る様に口にふくむ。
しかし、私はいつになったら帰れるんだろうか。
時計を持たない私は部屋に備え付けられているオシャレな置時計に目を向けると、お昼をとうに過ぎていた。
そう言えば今日学校は、半日授業だったじゃん!
そろそろ帰らないと、勘のいい兄さん達に詮索される。
もし詮索されて、今日の事がバレたらホントに殺しかねないし……それだけは何としても阻止しなければ。
「あ、あの……そろそろ帰りたいんですけど」
おそるおそるそう声をかけると、男はギロッと鋭い目で私を睨みつける。
まさに蛇に睨まれた蛙状態になった私は、ビクッと身体を震わせた。
しかし、ここで諦めたら一生ここから出られない気がする。
そう思った私は、勇気を振り絞って再び口を開いた。
「か、帰らないと、家にいる兄たちが心配するし……だから、えと……」
恐怖のせいで上手く言葉がつなげられず、思わず涙が出そうになる。
もうやだ、この空間。
怖いし、わけわかんないし……やっぱ怖いし。
「いいだろう……少し待ってろ」
てっきり断れるかと思ったが男はそう言い、自分の懐から携帯を取り出すと何処かにかけはじめた。
しかも、男が発したのは「来い」の一言だけだ。
たったあれだけで通じるのか疑問に思ったが、数分後この部屋の扉からノックの音が聞こえてきた。
あれだけで来るんだ、やっぱこの人腐ってもボスなんだ。
「何か用? ボス」
扉を開けて入ってきたのは、私をこの屋敷に連れてきたあの赤ん坊だった。
確か、マーモンっていったっけ。
男はマーモンさんをジロッと睨むように見れば、それだけで何かが通じたのかマーモンさんは「あぁ」と声をあげた。
「分かったよ。この娘を家まで送ればいいんだね」
「……何度も言わすんじゃねぇ」
フイッと視線を逸らしながらそう言う男に、マーモンさんは特に気にもしてないように「ごめん」とだけ言うのだった。
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長月シキカ(プロフ) - ニャン将さん» コメントありがとうございます!ここの所更新が思うように進まず申し訳ありません。これからも頑張りますのでよろしくお願いします_(._.)_ (2017年4月16日 22時) (レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
ニャン将(プロフ) - 更新楽しみにしてます。頑張ってください! (2017年4月15日 21時) (レス) id: 74292a2e84 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - かえさん» コメントありがとうございます! かえ様のお言葉大変嬉しく思います! これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いしますm(._.)m (2017年2月26日 23時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
かえ - とっても面白いです!更新楽しみにしています。 (2017年2月26日 23時) (レス) id: ad74bb0de7 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - ニャン将さん» コメントありがとうございます! 誰オチエンドにするか、また別のエンドにするかいまだに悩んでいるので今の段階で誰オチと言う事が出来ません。こんな作品でも最後まで見て頂ければ心から嬉しく思います。本当に申し訳ありません。 (2017年2月17日 23時) (レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年2月13日 15時