169標的 兄さんの正体の段 ページ19
口元に笑みを浮かべる伊作兄さんの目は全然笑っておらず、私は嫌な汗が背中を伝うのを感じた。
私はすぐに柿本さん達の前に立ち、庇うように両手を広げる。
「何をしているんだA? 私達はそいつらに灸を据えなければならないのだから少しあっちに行っていなさい」
「いやいやいや! なおさら退けないって!」
「何故だ? お前はコイツ等に拐かしたんだぞ」
「その時点で間違ってるって! 彼らが私に聞きたい事があるって言うからここまで来たんだよ」
「はぁ? じゃあ、このバカ三郎の勘違いだってのか?」
大きなため息をつきながら留三郎兄さんを指さす文次郎兄さんにカチンときたのか、留三郎兄さんが翼を大きく広げながら文次郎兄さんにくってかかる。
「んだとこのアホ次郎ッ!! お前こそ誰よりも早く突っ走って行ったじゃねぇか!」
「アホとはなんだッ!」
「やんのかコルァ!」
「やらいでかァ!」
留三郎兄さんと文次郎さんの間にバチバチと火花が散り始め、まさに一触即発の状態だ。
ここで妖怪同士の本気の喧嘩をされたらこの廃墟は一瞬で塵になる。
そう思いどうやって止めるか考える私に、背中から声が投げかけられた。
「な、何者なんですか? 彼らは」
「あぁ、うちの兄です。義理のですけどね」
そう言い、何とか二人の喧嘩を止めた私は兄さん達とも相談して六道さん達に兄さん達の本当の姿を話すことにした。
「っというわけで、私は兄さん達妖怪に守られているというわけです」
「にわかに信じられない事ですが、貴方のお兄さんの姿を見れば信じるを得ませんね」
「てめぇにお義兄さんなんて言われる筋合いはねぇ!」
「留三郎兄さん、話がややこしくなるからそう言うのはいいから……で、これで満足ですか?」
「……最期に一つ。以前僕は彼女にマインドコントロールをかけようとしましたが出来なかった。それは何故?」
「本来ならその時点で殺しているところだが……Aが嫌がるからやめておいてやろう。Aに感謝するんだな」
ふんっと鼻を鳴らしながら高圧的にそう言う仙蔵兄さんに六道さんは何も言わずコクリと頷いた。
「結論から言うと、お前のマインドコントロールが効かないのは私達が守っているからだ。Aは普通の人より霊に取り憑かれやすい体質でな……次にAに変なことをしようとした時は、容赦はせんからな」
そう言いギロッと鋭い視線をぶつける仙蔵兄さんに六道さんは小さく頷くだけだった。
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長月シキカ(プロフ) - ニャン将さん» コメントありがとうございます!ここの所更新が思うように進まず申し訳ありません。これからも頑張りますのでよろしくお願いします_(._.)_ (2017年4月16日 22時) (レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
ニャン将(プロフ) - 更新楽しみにしてます。頑張ってください! (2017年4月15日 21時) (レス) id: 74292a2e84 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - かえさん» コメントありがとうございます! かえ様のお言葉大変嬉しく思います! これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いしますm(._.)m (2017年2月26日 23時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
かえ - とっても面白いです!更新楽しみにしています。 (2017年2月26日 23時) (レス) id: ad74bb0de7 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - ニャン将さん» コメントありがとうございます! 誰オチエンドにするか、また別のエンドにするかいまだに悩んでいるので今の段階で誰オチと言う事が出来ません。こんな作品でも最後まで見て頂ければ心から嬉しく思います。本当に申し訳ありません。 (2017年2月17日 23時) (レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年2月13日 15時