５８標的 お前が決めた事の段 ページ8
「微かだけど、ずっと聞こえてたの。"アイツに殺された""アイツが憎い"っていう怨霊達の怨嗟の声が」
「! まさか、封印を解いてからたった数日で……」
「そう。だからこそ! 怨霊達の怒りを鎮め黄泉の国に還さなければならないんじゃないの?」
「……いいかA。この世で一番恐ろしいのはな。"生きた人間"なんだぞ! その恐ろしさをお前は知らないんだっ!」
兵助兄さんの怒号が静かな敷地内に響く。
兄さんの言う事も分からないではない……だけどだからって放っておくのもどうかと思う。
「確かに……兵助兄さんの言う通りかもしれない。でもだからって諦める理由にはならないよ」
「A……」
「兵助、行かせてやれ」
「! 立花先輩」
スゥと音もなく姿を現したのは、四つの尾を揺らしながら兵助兄さんの肩に手を置く仙蔵兄さんだった。
仙蔵兄さんは兵助兄さんの肩に手を乗せ一歩前にでると、私の目を見て口を開く。
「お前の封印を解いた時から、いつかはこんな日が来ると思っていた……A、今一度問う。お前は本当に穢れた魂達を成仏へと導く者、"鎮め人"になる覚悟はあるのだな」
「"鎮め人"……?」
「そうだ。この世に未練を残した魂達を鎮め、黄泉の国へと還す役割の人間をそう呼ぶのだ……そして一度"鎮め人"として生きていくと決めたら、もう後戻りはできないぞ。それでもいいのだな」
私の両肩を掴みいつになく真剣な目でそう語り掛ける仙蔵兄さんに私は一瞬考えたが、やはり決心は揺るぐことはなかった。
「仙蔵兄さん、兵助兄さん……私、なるよ。"鎮め人"に」
「……そうか、ならばもう我々は何も言わん」
そう言い、仙蔵兄さんは私に背を向けた。
仙蔵兄さんのその態度に、私は何処か見捨てられたように思えて少しだけ悲しくなる。
いや、見捨てられて当然だ。
兄さんたちに嘘をついてここまで来て、私を止める兄さんに我が儘を言ったのだ。
こんな私なんか、見捨てられて当たり前なんだ。
「勘違いするなよA……我々はお前を見捨てるわけではないのだぞ」
「せ、仙蔵兄さん」
「お前は自分の意思で"鎮め人"になると決めたんだ。ならば、我々はそれを手伝おう……だからそんなに悲しそうな顔をするな」
仙蔵兄さんはそう言いながら、いつもの優しい表情と声色、そして優しい手つきで私の頭を撫でる。
そんな仙蔵兄さんの優しさに、泣くのを我慢していた私は我慢しきれず、泣いてしまうのだった。
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長月シキカ(プロフ) - ニャン将さん» コメントありがとうございます! リクエスト通りに書けたか心配してましたが、ニャン将様に喜んでいただけて私も心から嬉しく思います!! これからも頑張りますのでよろしくお願い致します_(._.)_ (2017年1月26日 12時) (
レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
ニャン将(プロフ) - 長月シキカさん» 読ませていただきましたああぁぁあ! もうなんと御礼をもうしたらいいか分かりません!! これからも応援させていただきます! (2017年1月26日 1時) (レス) id: f1e49753f8 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - ニャン将さん» リクエストされていたお話が出来ましたので閲覧していただければ幸いです＾＾ (2017年1月19日 20時) (レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
ニャン将(プロフ) - ありがとうございます！楽しみにしてます! (2017年1月11日 18時) (レス) id: 74292a2e84 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - ニャン将さん» コメントありがとうございます! ニャン将様のリクエスト是非受けさせてもらいます＾＾ 話しの都合上番外編として書かせていただきます。 リクエストありがとうございます_(._.)_ (2017年1月11日 18時) (レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年1月6日 22時
