49馬鹿 ◎語呂合わせの記念日7 ページ49
「え?は、え?」
ここからは鉢屋の顔は見えないが恐らく赤くしていることだろう。
早く鉢屋のアホ面を見ようと離れようとするが何故か離れられない。
今日は何人もの人とハグをしたが今が一番落ちつく。
いや、私が落ちついてどうする。そう思いなおして私はすぐ離れた。
「悪いが私は幼稚なんでな…人が嫌といったらやりたくなるのがこの私、秋里Aなのだよ……覚えておきたまえ」
「……は、ハイ」
案の定鉢屋の顔は真っ赤になっていた。
普通ならここで大笑いするところなのだが、残念なことに今の私は普通ではないらしく、笑う気にはならなかった。
「ほら、用がすんだらさっさと帰れ。乙女の部屋にいつまでも男がいるもんじゃねぇよ」
「……どの口が言うか…ま、まぁいい。じゃあおやすみ」
鉢屋は赤くなった頬をそのままにして出てきた時と同じように天井から帰って行った。
なんで忍者って天井裏からしか出たり帰ったりするんだろうな。
まぁそんなことはどうだっていいか。
そう思い私は布団の中に潜り込んだ。
ふと自分の頬を触るとほんのりと熱を持っていた。この理由を私は深く考えないようにした。
深く考えてしまうとある結論に至ってしまう。そんな気がしたからだ。
さぁ明日も早い。明日にそなえて早く寝よう。
そう思い私は目を閉じる。今日もいい夢が見れますように……。
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時は数刻前に遡る。時間でいうとAが仙蔵を始め次々と上級生にハグをしまわっているころだ。
この時、鉢屋三郎はAに会わないよう茂みに隠れていた。
何故彼が茂みに隠れているかというと、先程雷蔵に聞いた話が関係する。
「まったく、Aの奴厄介なことを」
"今Aさんに抱きしめられたんだ、何でも今日は南蛮でははぐの日って言って親しい人同士が抱きしめあう日なんだって……三郎もされると思うよ!"
「だ、抱きしめあうとか……そんなのをされたら自分が保てるか分からないじゃないか」
ハァと深くため息をつく三郎。
しかし本心はAを抱きしめたいし抱きしめられたい。なのだが自分のこの性格が邪魔をして中々実行できないのだ。
まったくこれで天才などと言われて本当に情けない。
三郎は本日何回目かのため息をついたのだった。
結局三郎が行動を開始したのは雷蔵に背中を押された夜の事だった。
三郎は天井をつたってAがいる部屋へと向かう。
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2016年9月25日 23時