4馬鹿 ◎ある雨の日の出来事 ページ4
ザアァァア……。
「いや〜、参った!」
私は今学園長の頼みで金楽寺の和尚様の下へ手紙を渡すその帰り道に突然の大雨に振られ幸運にも廃寺があったのでそこに駆けこんでいる。
全く、珍しく潮江の奴と食満が仲良くしてんのか?
「ったく!傘もねぇし……しゃーねぇ、小雨になるまで待つか」
私はバチが当たるかもと思いつつも賽銭箱裏の座れそうな所に腰を降ろした。
勿論座る前に手を合わせるのも忘れない。
私は持っていた手拭いで身体を軽く拭いていくがかなり濡れてしまっていたらしく手拭いはすぐに吸い取った水分で重くなる。
着物の裾を絞っていると自分のすぐ近くに誰かの気配を感じた。
「そこにいるのは誰だ?」
「……よく分かったね」
私が声をかけるとスタッと誰かが降りてきた。
振り向いて誰かを確認すると最近私にちょっかいをかけてくる忍び組頭の雑渡の姿がそこにあった。
「なんだお前か」
「なんだとは酷いね」
「んな事よりなんでお前がここにいんだよ」
「私かい?私はこの近くで仕事してたんだよ、もう終わったけどね」
「じゃあさっさと帰れよ、また部下の人が怒ってやってくるんじゃないのか?」
「帰ろうとしたらこの雨でね、それに君の気配を感じてね」
「はいはい、ストーカー乙」
私はやれやれと息を吐いた。
雑渡はこのまま帰るかと思ったが何故か私の横に腰を降ろす。
「何?あんたも雨宿りか?」
「うん……あ、飲む?まだ口は付けてないよ」
雑渡はどこからか出した竹筒を私に差し出す。
その竹筒と雑渡を交互に見て私は竹筒を受け取った。
「ありがとう……ブフッ!!?」
「どうしたんだい?」
「どうしたじゃねぇよ!!何で中身が水とかじゃなくて雑炊なんだよ!!ビックリして吹いたじゃねぇか!!」
そう雑渡が渡した竹筒の中身は水かと思われたが何故か雑炊が詰められていた。
前から思っていたがコイツは色々とおかしい!!
うわ、顎にまで零れてるし。
私は自分の顎についた雑炊を指で掬い口へと運ぶ。
「……味は悪くねぇんだから普通に食えばいいのに」
「Aちゃん、それ狙ってやってる?」
「はぁ?私は今武器とか持ってねぇんだから狙うもくそもねぇだろうが…お、止んできたな!じゃあ私はこれで帰るからお前も早く帰れよ!」
そう言い私は雑渡に竹筒を返し廃寺を後にした。
その後ろで雑渡はというと……。
「あれで狙ってないとか…おじさん参ってしまうよ」
赤くなった自分の顔を手で隠しながらそう呟く雑渡なのであった。
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2016年9月25日 23時