２８馬鹿 ○三郎との宝 ページ28
「よいしょっと……」
ハァ、ウチの家ってどうしてこうも物が多いんだろうな。
今家に私しかいないので私が部屋の片づけをするハメになってしまっている。
なおこの家には今私しかいない。
「全くあの馬鹿兄貴共の物が多すぎて嫌になる…いっそのこと捨てちまおうか」
いや、んなことしたら私が逆にぶちのめされるのがオチか。
ぶちのめされる所を想像すると背筋が冷え切ってしまった。
「とにかく、アイツらの物はこの上にでも置いておくか」
私はあの馬鹿兄貴共の荷物が入った段ボールを掲げ椅子の上に乗るがアイツらの荷物が重すぎてバランスを崩してしまう。
「しまった!」
落ちる!そう思い今から自分に襲いかかるであろう痛み衝撃に耐えるよう目をつむった。
しかし、やってきたのは痛みなどの衝撃ではなく優しく身を包みこむ抱擁感だった。
こんな事をするのはアイツしかしない、そう思い目をゆっくり開けるとそこには私の想像した通りの人物がそこにいた。
「三郎……」
「まったく、何をやってるんだお前は」
「片付け」
「見れば分かる…お前はもうお前だけの身体じゃないんだからあまり無理はしてくれるな」
そう言い三郎は愛おしそうに私の腹をさする。
三郎が私の腹をさすることで分かるように私は三郎の子を身ごもっているのだ。
現在妊娠二か月目でいつもはつわりが酷いが今日は珍しく気分がいい。
「A、どこも怪我はないか?つわりは?気分は?」
「怪我はないし今日はつわりも今んとこはない、気分は上々だ…てかお前今日仕事は?」
「なんかAが危険な目に遭う気がして早退してきた」
「……お前そんなの繰り返してるといつか会社クビになるぞ」
「AとAの家族と雷蔵より大事な物なんかない…仕事ならいくらでも探して見せるさ」
三郎は私をゆっくりと地面に降ろし床に散らばった馬鹿兄貴共の荷物を段ボール箱に手際よく詰めていく。
私も手伝おうと手を出したが三郎にやんわりと止められてしまった。
「A今度の検診は?」
「来週のこの日…別に一人でも行くから気にしなくていいよ」
「いやその日は元々休みだからついていくさ」
「……思うんだが産婦人科についてくるの恥ずかしくないのか?」
「何をいう 夫が愛する妻に付き添うのは当たり前だろう?」
そう恥ずかしげもなく言う三郎に私はどうしようもなく熱くなった頬を隠すしか術は無かったのであった。
２９馬鹿 ○もしも結婚相手が雑渡だったら?→←２７馬鹿 ◎昼下がりの出来事 終
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2016年9月25日 23時
