3馬鹿 ◎とある日常2 ページ3
「……若太夫の手紙では貴方の事を本当の姉のように慕っているのがひしひしと伝わってきました」
「しょ照星さん!!」
虎若は頬を赤く染めながら照星さんに言い寄る。
おーおー顔真っ赤か、可愛いな〜。
「そうだ!照星さんAさんどうですか!?」
「どうですかって何のことだよ?」
「僕、照星さんのご結婚相手はAさんが一番だと思うんです!!」
「ブフゥ!!」
虎若の衝撃発言に飲んでいたお茶を勢いよく吹きだしてしまう。
私の前の席に誰も座ってなくてよかった。もし座っていたら確実にずぶ濡れだっただろう。
「ゲホゲホッおい虎若!いきなり何言ってんだよ!照星さんも困るでしょうに」
「いや、別に……私もよく言われているのでな」
そう言いながら静かにお茶を啜る照星さん。
おいおい、この男は何でそんな冷静でいられるんだよ。
いや、ここで慌てふためくと逆に子供っぽいか。
そう思いなおした私はコホンと咳ばらいを一つこぼして虎若を見る。
「あのな虎若、悪いが私はまだ結婚する気はないし照星さんには私なんかよりもっと好い人が将来的に見つかるから虎若が心配することは無いよ」
「…私は別に構わないがね、貴方みたいな女性は初めて見た」
照星さんは私に視線を向けながらそう言う。
まぁ私のような女は私も見たことがないわ。
「ほら!照星さんもこう言ってるし、ね!」
いやね!じゃなくてね……。
さて、どうしたものかと頭の中で考えていると照星さんがクスッと笑みをこぼした。
「フフ…すまない、少々冗談が過ぎたようだ…」
「まぁ正直どうしたもんかと悩みましたよ」
私は一気に息を吐いて顎に手をついた。
そんなことより……。
「虎若は今日乱太郎達と約束があったんじゃないか?」
「そうだった!じゃあ照星さん、父ちゃんによろしく伝えて下さいね」
「あぁ、分かった」
こうして食堂には私と照星さんの二人だけになった。
ちなみに食堂のおばちゃんはお茶っ葉がないと言い買い出しに出ている。
「にしても照星さんも冗談を言われることもあるんですね…虎若から聞いた話じゃあもっと冷静な方だと思っていたのでちょっと驚きました」
「…半分は冗談ではないがね」
「へ?」
笑みを浮かべながら言う私に照星さんはグッと顔を近づけて私の耳元でこう囁いた。
「私は君のように素直な子、嫌いではないよ」
囁いた後照星さんはすぐさま離れ「ごちそうさま」と残し食堂を出ていく。
その場に残された私はしばらく動けずにいた。
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2016年9月25日 23時