157話 ページ7
四方八方的に囲まれまさに四面楚歌の状態になってしまった男であるが、男は誰よりも諦めの悪い男であった。
顔を青ざめさせたまま、男は狂ったかのように笑いながら喚き散らし始める。
「勝ったと思うなよっ雑渡に忍たまのガキ共! 万が一に備えて一定時間俺が戻らない場合、スギヒラタケ城の忍軍全てがこの学園に向かうよう指示を出してんだっ。時間からしてもうすぐ大群がここに押し寄せるだろう。そうなりゃもう終いだっ!!」
ぎゃははと耳障りなほどの笑いが辺りにこだまする中、雑渡は憐れんだ様子で大きなため息を吐いた。
「いい気分のところ大変に申し訳ないが、その大群とやらはここへは来ないよ」
「なんだとっ」
「だって、そっちには私の優秀な部下たちとこの学園で教鞭を執っておられる先生方が向かっているのだから」
「え――っ!?」
「我々がそこまで見抜けていないと本気で思っていたのか? だからお前は忍びとして三流なんだ」
今頃ここにいる奴らのようになっていることだろうと囁きつつ雑渡は、ガクッと崩れ落ちるように膝を付く男を冷たい目で見下ろす。
横薙ぎの風がひときわ強く吹き、髪の長い忍たま達の髪が意志を持たず遊びだした。
雑渡が一流のプロ忍であることを差し引いても、男の考えそうなことはある程度は簡単に予想できる。
そんな程度の男の考えを先回りすることなど、雑渡にとっては容易いことだった。
最後の切り札として残しておいた作戦も不発に終わってしまった男は、沸き上がる悔しさや怒りのまま歯が砕けんばかりに強く食いしばる。
完全に戦意を失ったと判断した忍たまの六年生である潮江文次郎が、戦意喪失の男を捕らえようと縄を取り出しゆっくりと男に近づいていく。
「……っ! そいつに近づくな!!」
「はっ? ――グァッ!!!」
何かを察した雑渡が慌てた様子、声色で鋭く叫んだ。
珍しい様子を見せる雑渡の真意が分からなかった潮江だったが、その直後聞こえた一つの発砲音と左肩に
雑渡は間際になって気付いたのだ。
戦意を喪失していたと思われていた男が、密かに反撃の用意をしていた事に。
「文次郎っ! 大丈夫かいっ」
「あ、あぁ――掠っただけだ」
だが、雑渡の言葉が無ければ自分は男が放った鉛玉に貫かれていただろう。
すぐさま駆け寄って来た保健委員長である伊作に手当てされつつ、文次郎は空いた手で冷や汗を拭った。
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長月シキカ(プロフ) - mozomozoさん» コメントありがとうございます！レスが遅くなってしまい申し訳ありません。この作品ではキャラの心理描写に気をつけながら作り上げたので、mozomozo様のお言葉とっても嬉しいです^ - ^閲覧感謝です♪ (7月13日 17時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
mozomozo(プロフ) - とっても素敵なお話でした。何より心理描写が綺麗で本当に惹き込まれました。 (7月1日 2時) (レス) @page30 id: c5d40106d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2022年10月28日 0時
