163話 ページ13
敵の腕に掴みかかったAの頬を殴り払いのけた男は、低く呻くと顔を真っ赤にさせながらけたたましく叫びだした。
「このっ、クソアマがぁぁああああっ!!!」
空気が震えるほどの絶叫の後、男はそのまま流れるように懐から苦無を取り出しAに向かって投擲した。
急な事でまだまだ忍者として未熟な忍たま達は行動に移ることが出来なかった。
しかし、雑渡だけはすぐさま行動に移った。
すぐに空を飛ぶ苦無を落とそうと暗器を目標目掛けて投げたが、ソレは僅かに届くことなく敵の苦無をすり抜けていった。
真っ直ぐに投げられた苦無は、そのまま吸い込まれるようにAの左胸へと深々と突き刺さる。
「えっ、あっ――」
Aの小さな口から、蚊の鳴くような弱弱しい声がもれでる。
何が起こったか分からないとでも言うようなその声を最後に、痛みからか顔を歪ませたままの彼女はゆっくりと後ろへと倒れ込む。
どさりと力なく倒れるAのその音で我に返った忍たま達は、各々悲痛な面持ちで彼女の名前を叫んだ。
倒れた彼女に一番近くにいた五年生の勘右衛門が急いで駆け寄り、彼女の身体を抱え上げる。
彼女の身を包む白い寝間着に刺さった黒い凶器を中心に、赤い染みがじわじわと小さく輪を描きながら広がっていく。
勘右衛門と同じように駆け寄ってきた保健委員長である伊作がAの容態を診始める。
幸か不幸か、彼女に深く刺さった凶器が傷口に蓋をしているおかげで大量出血は免れていた。
しかし、致命傷である事には変わりはない。
「クソックソクソクソクソがッ! 格下の女如きに俺に傷をつけやがってっ! お前が邪魔しなけりゃ俺が天下を取れたというのに死にやがって! この役立たずがっ!!」
すぐさま手当てしようとする伊作達の耳に、男の喧しく汚い声が辺りに響いた。
その聞くに堪えない内容に、この場にいた忍たま達全員から堪忍袋の緒が切れた音がする。
伊作と勘右衛門は暴発しそうな怒りを何とか堪え、Aを抱え医務室へと走る。
各々怒りのまま男へ反撃しようとそれぞれの得意武器を構えようとするが、その場に似つかわしくない声が辺りを支配した。
「あーあ、お前やっちゃったね――眠れる獅子を起こしたな」
「はァ? 何言っ――ぎゃぁぁぁあああっ!?」
雑渡は放った言葉に言い返そうとした男の言葉は己の汚い悲鳴によってかき消される。
男は悲鳴をあげながら痛みが生じる部分へ目を向けると、先ほどまで生えていたはずの右腕が無かった。
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長月シキカ(プロフ) - mozomozoさん» コメントありがとうございます！レスが遅くなってしまい申し訳ありません。この作品ではキャラの心理描写に気をつけながら作り上げたので、mozomozo様のお言葉とっても嬉しいです^ - ^閲覧感謝です♪ (7月13日 17時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
mozomozo(プロフ) - とっても素敵なお話でした。何より心理描写が綺麗で本当に惹き込まれました。 (7月1日 2時) (レス) @page30 id: c5d40106d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2022年10月28日 0時
