50話 ページ50
だが、私は男が思い出すまで待つことはせず口を開きました。
「入院といってもどうせそんな大したことないんだろう。そんなもん甘えだ。 お前にはそれくらいしか能がないからさっさと仕事しに来い。この給料泥棒、でしたっけ? それにこの言葉の前にも酷い言葉をつらつらと仰っておりましたが、なんでしたら復唱してみましょうか?」
私がそう言うと、男の脂ぎった顔がどんどんと青ざめていった。
よく見ると体が震えているような気もしないでもないですが、まぁどうでもよいことですね。
そんな男を冷めた目で見下ろしながら、私は小さく息を吐いた。
「入院が大したことない? 彼女は死にかけたのですよ。寒空の下、高熱で倒れたんですよ。肺が真っ白でもう少しで肺炎になるところだったんですよ。肺炎は処置が遅れたら死ぬかもしれない病気なんですよ。それの、どこが大したことないんですかっ!」
「ヒ、ヒィッ」
「おや失礼」
男の怯えたような短い悲鳴を聞かぬふりをして、つい声を荒げてしまったことへの謝罪を軽くし、私はグラグラとマグマのように沸いてくる怒りを誤魔化すようにコホンと咳ばらいを一つこぼす。
「そう言うことでして、彼女は数日入院致します。よろしいですね」
「は、はぃ……」
「あぁそうです。彼女が退院し職場に復帰した際には適切な対応を願います。私の大事な友人に、いえそれ以前にパワハラ等のハラスメントなんぞ言語道断なのですから」
「ぱ、ぱわはら……」
「改善されないのなら、しかるべき所に報告するまでです。こちらには医師からの診断書や先の発言の録音データもありますので、それなりの対応をさせていただきます」
私の発した言葉に、目の前の男の顔はサァと血の気を引かせたように真っ青になる。
ちなみに、録音データなんてものはありません。
あの時は突然で録音なんてする時間なんてありませんでしたから、つまりはハッタリというわけです。
本来ならこのような嘘をつくことはありませんが、少しでも彼女が心地よく働けるようにするため、私は心を鬼にして嘘をついたのです。
私のハッタリは成功したようで、男は体を震わせてながらガクガクと首を縦に振った。
「わ、分かり、ました」
「その言葉、お忘れなきようお願い致します、ね」
「ガゥルルルルッ!」
軽く頭を下げ上げた瞬間に私は男を見下げながらキッと目を細めると、今まで小さく唸っていただけのゾロアが歯茎を剥き出して地を這うように低く唸りました。
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長月シキカ(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます! サブマスの小説って確かに少ないですよね……。鶴媛様のお言葉を胸にこれからも精進致します! 閲覧感謝です♪ (2022年1月2日 0時) (
レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - サブマスが出てくる小説少ないので嬉しいです！！ (2022年1月1日 20時) (レス) @page50 id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - きりさん» コメントありがとうございます! 最近ハマったポケモンという舞台での拙い作品にそのように言っていただき本当に嬉しいです＾＾確かにBWの作品って最近ないですよね……きり様の言葉を励みに、これからも頑張ります!! 閲覧感謝です♪ (2021年12月18日 23時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
きり - あ、ごめんなさい。「擬態が」の部分はミスです💦 (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
きり - 初コメ失礼します。すっごく面白いです！ポケモン、特にBWの小説は最近全然ないので、久しぶりに見つけてすごく嬉しくなりました。 サブマスの2人、いいですよね……！ゾロアも擬態がとても可愛いし、読んでいてほっこりします。これからも更新頑張って下さい！ (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年11月28日 2時
