48話 ページ48
「やはり変わっておりませんね」
ゾロアを慈しむような目で見つめ優し気な手つきで背を撫でるAの姿に、思わずぽそりと小さく呟いた言葉は狙った通り彼女に届くことはなかった。
私の事を覚えていらっしゃらない彼女に聞かせてしまっては、混乱させてしまいますからね。
Aは幼い頃から人にもポケモンにも優しい人で、私はそんな彼女の優しさに心を奪われたのです。
そんな彼女の優しさにつけこむようなあんな会社に、Aは必要ありません。
私は首を傾げながらゾロアを撫で続けるAを見つめながら。先ほどの出来事を思い返す。
事の発端は、病院から彼女が意識を取り戻したと連絡がありクダリと彼女のゾロアと共にAのお見舞いに赴いた時です。
看護師の女性からAの病室を教えていただきその病室のドアの前までやって来た時、ドア越しから彼女ではない声が聞こえてきました。
声の感じからして直接ではなく携帯越しからの声でしょう。
その声は男のもので、喧しいくらいに喚き散らす声が耳をつんざきます。
聞くだけで腸が煮えくり返るような罵詈雑言を聞きながら、「申し訳ありません」と何度も何度も謝るAの声に、私は胸が締め付けられるような心地がいたしました。
"入院っつってもどうせそんな大したことないんだろう! そんなもん甘えだ甘え! お前にはそれくらいしか能がねぇんだからさっさと仕事しに来いっ! この給料泥棒がぁッ!!"
携帯越しの男のその言葉に、私の中で何かが切れたような音が聞こえました。
今まで大人しくしていたゾロアも、グルルと小さく唸り声を上げます。
「クダリ」
「うん。行っておいでよ、ノボリ」
流石、私の双子の弟です。最後まで言わなくても私の言いたいことを理解してくれた片割れに心の中で賞賛しながら、私はAの病室の前から離れました。
ナースステーションに在中していらした看護師さんからAの担当医をお聞きし、巡回から戻ってきた彼から彼女の事を聞き出しました。
私の突然の話に担当医は少々訝し気な様子を見せるが、私が彼女の幼馴染であることを伝えると担当医は「本当は駄目なんですけどね」と前置きをしてから教えてくださいました。
担当医が言うには、彼女は何度かここに点滴を打ちに来院した履歴があったようです。
なんでも彼女が働いている会社はそれは酷いブラック企業であり、彼女の身体は慢性的な過労状態であるそうだ。
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長月シキカ(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます! サブマスの小説って確かに少ないですよね……。鶴媛様のお言葉を胸にこれからも精進致します! 閲覧感謝です♪ (2022年1月2日 0時) (
レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - サブマスが出てくる小説少ないので嬉しいです！！ (2022年1月1日 20時) (レス) @page50 id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - きりさん» コメントありがとうございます! 最近ハマったポケモンという舞台での拙い作品にそのように言っていただき本当に嬉しいです＾＾確かにBWの作品って最近ないですよね……きり様の言葉を励みに、これからも頑張ります!! 閲覧感謝です♪ (2021年12月18日 23時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
きり - あ、ごめんなさい。「擬態が」の部分はミスです💦 (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
きり - 初コメ失礼します。すっごく面白いです！ポケモン、特にBWの小説は最近全然ないので、久しぶりに見つけてすごく嬉しくなりました。 サブマスの2人、いいですよね……！ゾロアも擬態がとても可愛いし、読んでいてほっこりします。これからも更新頑張って下さい！ (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年11月28日 2時
