5話 ページ5
二週間ぶりに取れた休みを丸々潰して、私は新しいコスメと勉強代わりにと雑誌を数冊購入し、それらを使って今最近の流行りのメイクやファッションをなんとか自分のものにした。
不器用な私が一日で全てをマスターしたのは、ひとえにあの男の人への恋心のおかげだろう。
あの人に少しでも良い印象を与えられるように、あわよくばあの人とお近づきになれるようにとそういった思いから、私は必死で雑誌やネットの情報を頭に叩き込み、手には化粧の動作を染み込ませた。
そして今日、私はいつもより一時間も早く起きて手早く食パンとコーヒーを口に放り込んだ。それらを食べ終えると、歯磨きと洗顔をするために洗面所へと向かう。
歯磨きを終え洗顔も終えた私は、自室のテーブルの前に座り念入りに化粧を施す。
化粧水と乳液で整えた肌の上に化粧下地を滑らせ、コンシーラーで目の下のクマを消す。
パウダーファンデーションとフェイスパウダーを顔にはたく。
初めて化粧をしたとき、自分の顔が粉まみれになるのを見てまるで揚げ物料理の下準備のようだ思ったものだ。
眉を描きアイメイクを済ませ、頬骨にチークを乗せ最後に口紅を塗って完成である。
最近はナチュラルメイクというのが主流で、出来るだけすっぴん風に見えるように化粧するのが流行りらしい。
これが、なかなかに難しい。こってこてに化粧するほうが簡単に思えてきたくらい難しい。
全ての化粧を終えた私は、目の前の卓上スタンドミラーを覗き込んだ。
鏡の中には見違えるほどの美人が……とまではいかないが、そこそこ見れる顔が写っている。
少なくとも、一目惚れをした男の人に見せたあの女には見えない……筈だ。
そう自分に言い聞かせながら、視線を横に向けハンガーに掛けてあるスーツに目を向ける。
着ていく服はスーツ一択、それでも皺一つ残さないよう前日にしっかりとアイロンをかけてある。
一人暮らしを始めた頃に母から押し付けられたアイロンだったが、こんな風に役に立つとは。
人生、何があるか分からないものだ。
皺一つないスーツに袖を通し、髪を整え、最後にもう一度鏡で確認する。
うん、ファンデもよれてないし歯に口紅がついたりしていない、よし大丈夫だ。
最終チェックを終えた私は、履きなれたパンプスに足を入れ自宅を背にしアパートの錆びた階段を降りる。
この階段は尋常なほど錆びているので、いつか壊れるんじゃないだろうかっていう一抹の不安を抱えているのはここだけの話である。
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長月シキカ(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます! サブマスの小説って確かに少ないですよね……。鶴媛様のお言葉を胸にこれからも精進致します! 閲覧感謝です♪ (2022年1月2日 0時) (
レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - サブマスが出てくる小説少ないので嬉しいです！！ (2022年1月1日 20時) (レス) @page50 id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - きりさん» コメントありがとうございます! 最近ハマったポケモンという舞台での拙い作品にそのように言っていただき本当に嬉しいです＾＾確かにBWの作品って最近ないですよね……きり様の言葉を励みに、これからも頑張ります!! 閲覧感謝です♪ (2021年12月18日 23時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
きり - あ、ごめんなさい。「擬態が」の部分はミスです💦 (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
きり - 初コメ失礼します。すっごく面白いです！ポケモン、特にBWの小説は最近全然ないので、久しぶりに見つけてすごく嬉しくなりました。 サブマスの2人、いいですよね……！ゾロアも擬態がとても可愛いし、読んでいてほっこりします。これからも更新頑張って下さい！ (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年11月28日 2時
