37話 ページ37
口元に手をやり激しく咳をしたAは、ゾロアを抱えたままふらふらと道端に倒れこんだ。
横倒れたAの腕から這い出たゾロアは、彼女の周りをウロウロする。
「クゥン……ガゥル、クゥン……」
時折荒くそして浅い呼吸する彼女の顔に鼻先を押し付けたり舐めたりするが、Aの両目は固く閉じられたままだ。
そうこうしている間にもAの呼吸がどんどん弱弱しいものになっていくが、幼い、それもポケモンであるゾロアにはどうすることも出来ず、ただただAの傍をウロウロするだけだ。
「……っ……」
「……ぅ……ぁ」
ふと、ゾロアの耳が聞き覚えのある声を捉えた。
ゾロアは心配そうな目でAを一瞥し、その声を方へ駆けた。
タッタッと駆け出したゾロアの目に、二人の青年の姿が映る。
同じ服、同じ背格好、そんな二人の姿をゾロアは見覚えがあった。
ゾロアの目の前にいたのは、バトルサブウェイのトップに君臨するサブウェイマスターのノボリとクダリがだった。
そんな二人に後ろから駆け寄り、大きく鳴いた。
「うわッ!? あれ、ゾロア?」
「おや、珍しいですね。このような場所にゾロアなんて」
「ガウ! ガウ!」
自分を珍しがる視線など気にもせず、ゾロアは彼らに訴えかけるように鳴き続ける。
「お腹がすいてる、わけではなさそうですね」
「なにか、僕らに伝えようとしてる、のかな?」
ゾロアの必死の様相に、なにかを察した二人はそう言いながらお互いに顔を見合わせる。
しかし、決定的な何かが分からず首を傾げる二人に、ゾロアはノボリのズボンの裾に噛みついた。
グイグイと裾を引っ張ってくるゾロアの様子に、ただならぬ雰囲気を感じ取ったノボリは膝を折り、ゾロアと目を合わす。
「貴方は、私をどこかに連れて行こうとしているのですか?」
「ガウッ! クォン!」
まるでそうだと言わんばかりにひと際大きく鳴いたゾロアに、ノボリはゆっくりと深く頷いて見せた。
「……分かりました。行きましょう。クダリは先に帰って」
「なに言ってるの、ノボリ。僕も一緒に行くに決まってる」
さも当然と言いたげなクダリの表情に、ノボリは我が弟の事だ、これ以上何か言っても聞かないだろうと悟った。
というわけで、二人は先導するゾロアの後を付いていくことにした。
駆け足で先導するゾロアを見失わないように付いていった先は、本来なら何の変哲もない道である筈だった。
道端で、人が倒れてなければ。
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長月シキカ(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます! サブマスの小説って確かに少ないですよね……。鶴媛様のお言葉を胸にこれからも精進致します! 閲覧感謝です♪ (2022年1月2日 0時) (
レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - サブマスが出てくる小説少ないので嬉しいです！！ (2022年1月1日 20時) (レス) @page50 id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - きりさん» コメントありがとうございます! 最近ハマったポケモンという舞台での拙い作品にそのように言っていただき本当に嬉しいです＾＾確かにBWの作品って最近ないですよね……きり様の言葉を励みに、これからも頑張ります!! 閲覧感謝です♪ (2021年12月18日 23時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
きり - あ、ごめんなさい。「擬態が」の部分はミスです💦 (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
きり - 初コメ失礼します。すっごく面白いです！ポケモン、特にBWの小説は最近全然ないので、久しぶりに見つけてすごく嬉しくなりました。 サブマスの2人、いいですよね……！ゾロアも擬態がとても可愛いし、読んでいてほっこりします。これからも更新頑張って下さい！ (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年11月28日 2時
