33話 ページ33
それからノボリは、部下がしてたホームの巡回をする仕事をなにかと理由をつけて変わってもらったり、バトルトレインから執務室へ戻る際にキョロキョロと辺りを見渡したりと、本物のAを探していた。
本物というのは、ノボリと一緒にいる時に僕も見たのだ。
チラリとしか見えなかったが、あの人は確かにAだった。
彼女とは幼い頃に会ったきりだったが、こうまではっきりとAだって分かるとは思わなかった。
大きくなったAは、若干やつれたように見えなくもないが昔と変わらずキラキラと輝いて見えた。
「ほらノボリ。Aだよ、話しかけてきなよ」
「えぇ、で、ですが……」
ほら、とAがいる方へ指を指すが、ノボリはほんのりと頬を染めながらもじもじするだけで、そうしている間にAは移動して見失ってしまう。
そうしては、はぁと大きくため息をつくノボリに、僕はやれやれと肩をすくめることしか出来ない。
朝と夜がAと会う確率が高いことに気付いた僕とノボリだったが、この通りAを見るとまぁモジモジモジモジして、いきなり話しかけたら気持ち悪くないか、とか、なんて言って話しかければ、とかでなかなか話しかけられないのだ。
もう尻でもぶっ叩いてやろうかと思う時も多々あったが、ある日やっとノボリがAに話しかけるところを見かけた。
遠目からだったから、ノボリ達がなにを話していたのかまでは分からず、小休憩の時に聞いてみた。
ノボリが言うには、Aがこの辺りじゃ珍しいゾロアを連れていたからそれをきっかけにして話しかけたらしい。
でも、やっとAと話せたのにどこか悲しそうな顔をするノボリに僕は何故と訊ねてみた。
話を聞くと、どうやら彼女はノボリのことを覚えていなかったみたいなのだ。
「"初めまして"だと、言われてしまいました」なんて言いながらしょぼくれるノボリを横目に見ながら、僕はお気に入りのメーカーのココアを啜る。
「そっか、じゃあ僕の事もきっと覚えてないね……それで? ノボリはもう諦めちゃうの?」
少し熱めに入れたせいかまだゆらりとあがる湯気を見つめながら、ノボリがなんて言うのかなんて、とっくに分かってはいるけど、一応僕はそう聞いてみた。
「諦めるわけないでしょう。数年探していたんです。諦めてたまるものですか」
「ふふっ。ノボリならそう言うと思った」
そう笑いながらココアを啜ると、僕の舌が見事なやけど状態になりノボリに笑われてしまった。
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長月シキカ(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます! サブマスの小説って確かに少ないですよね……。鶴媛様のお言葉を胸にこれからも精進致します! 閲覧感謝です♪ (2022年1月2日 0時) (
レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - サブマスが出てくる小説少ないので嬉しいです！！ (2022年1月1日 20時) (レス) @page50 id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - きりさん» コメントありがとうございます! 最近ハマったポケモンという舞台での拙い作品にそのように言っていただき本当に嬉しいです＾＾確かにBWの作品って最近ないですよね……きり様の言葉を励みに、これからも頑張ります!! 閲覧感謝です♪ (2021年12月18日 23時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
きり - あ、ごめんなさい。「擬態が」の部分はミスです💦 (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
きり - 初コメ失礼します。すっごく面白いです！ポケモン、特にBWの小説は最近全然ないので、久しぶりに見つけてすごく嬉しくなりました。 サブマスの2人、いいですよね……！ゾロアも擬態がとても可愛いし、読んでいてほっこりします。これからも更新頑張って下さい！ (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年11月28日 2時
