21話 ページ21
「……すみません、何でもありません。それでは失礼します」
「え、あぁ、し、失礼します」
そういいノボリさんは、私に向かって軽く頭を下げるのを見て、拍子抜けしていた私が慌てて言葉を紡いだ。
そして、彼は今度こそ先ほど声がした方へと体を向けて、スタスタと歩いていった。
ノボリさんのピシッと伸びた大きな背中に見惚れていると、足元から聞き慣れた鳴き声が聞こえてくる。
いまだ足元にいるゾロアを抱え、私はノボリさんとは反対方向へ進みだす。
大人しく腕に抱えられているゾロアの柔らかな頭を撫でながら、私は小さな声でゾロアに話しかける。
「なんでここにいるのかとか、色々と聞きたいことは山とあるけど、とにかく……よくやったっ!」
わしゃわしゃとゾロアの頭を撫でると、若干鬱陶しかったのかその短い前足で私の手を引っ掻く仕草を見せた。
しかし、そんな抵抗も私の「お礼に今日はちょっとお高い奴のにしようね」という言葉で大人しくなる。
なんなら、嬉しそうに尾っぽを振っている。
パタパタと振られた尻尾がお腹に当たって少々くすぐったい。
「そういや君、これからどうするの? 私はこれから電車に乗るんだけど」
ふと思い立った私は、ゾロアにそう訊ねてみる。
首を真上に逸らし私を見上げてくるゾロアの目からはなにも読み取ることが出来ず、私はとりあえずゾロアを下ろすことにした。
床に下ろしさえすれば、自分でどこかに行くかもしれない。
そんな期待から人気の少ない場所まで移動しゾロアを腕から下ろしたが、私の期待とは裏腹に、ゾロアはその場を動こうとはしなかった。
「いや、どこも行かないんかい」
思わずそんなツッコミをしてしまうが、ゾロアのどこか緊張したような面持ちに私はふと思った。
もしかしたら、この子は初めて地下鉄に来たのではないかと。
もし私の考えが当たっていたとするならば、ゾロアにとって今の状況はかなり不安なのではあるまいか。
私はポケットに入れていたモンスターボールを取りだしゾロアに向かって見せてみるが、やっぱりゾロアはボールに入ろうとはしない。
まぁこうなると思った。
「……しゃーない。おいでゾロア」
この子を連れて行くことに決めた私はゾロアを抱き上げ、もう一度腕の中へとしまいこむ。
勿論、抱えたままだとこれから乗る満員電車で潰されてしまうので、電車内ではゾロアを頭に乗せることで電車を乗り越えるとしよう。
そう決め、私はいつものホームへと速足で向かった。
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長月シキカ(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます! サブマスの小説って確かに少ないですよね……。鶴媛様のお言葉を胸にこれからも精進致します! 閲覧感謝です♪ (2022年1月2日 0時) (
レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - サブマスが出てくる小説少ないので嬉しいです！！ (2022年1月1日 20時) (レス) @page50 id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - きりさん» コメントありがとうございます! 最近ハマったポケモンという舞台での拙い作品にそのように言っていただき本当に嬉しいです＾＾確かにBWの作品って最近ないですよね……きり様の言葉を励みに、これからも頑張ります!! 閲覧感謝です♪ (2021年12月18日 23時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
きり - あ、ごめんなさい。「擬態が」の部分はミスです💦 (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
きり - 初コメ失礼します。すっごく面白いです！ポケモン、特にBWの小説は最近全然ないので、久しぶりに見つけてすごく嬉しくなりました。 サブマスの2人、いいですよね……！ゾロアも擬態がとても可愛いし、読んでいてほっこりします。これからも更新頑張って下さい！ (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年11月28日 2時
