2話 ページ2
その衝撃を例えるなら、そう。
ピカチュウの十万ボルトを受けたような衝撃だ。
……受けたことはないけど。
なんてことを考えていた私と目線を合わせて膝をおる黒い帽子と黒いコートに身を包んだ男は、端正な顔をしていて真面目そうな印象を受けた。
口元はキュッと下げられてはいるが、その両目からは私を心配する念がありありと見て取れる。
私はその男から目を離すことが出来なかった。
なぜなら、男の容姿が私の好みドストライクだったからだ。
ドチャクソにタイプなその男は、その下げられた口をゆっくりと動かす。
「お客様、大丈夫でございますか? ご気分が悪いようでしたら救護室にお連れしますが……―――――」
目の前の男が心配そうな目と声色でそう言うのを最後に、私の記憶は朧気だ。
気が付いたら自宅である風呂トイレ付アパートのトイレに突っ伏していた。
口の中が異様に酸っぱくトイレ内の異臭から、私は自宅のトイレで吐き戻していたことを悟る。
私は、あのあとどうやって帰ってきたのだろう。
朧げな記憶をたどると、あの男の前では吐かなかったことは確かなことのようだ。
吐いたことで多少すっきりした私は、洗面台で口をゆすぎながら更に記憶をたどる。
記憶を遡りあの男の事を思い出した瞬間、私の顔がまるで火がついたかのように熱くなった。
心臓がバクバクと激しく鼓動するのは、燃えるように熱い頬の熱は、きっと酒のせいだけではないだろう。
「か、かっこよかったぁ……」
ゆすいですっきりした口内から、ぽろりとその言葉がこぼれ落ちる。
洗面台の鏡には、ドロリととろけた女の顔が写っていた。
まさに、恋する女の顔だった。
今までに感じたことのないような幸福感もそう長くは続かない。
何故なら、私はある重大な事実を思い出したからだ。
「……無理やん」
そう呟きながら、私は洗面台のシンクに両手を置いて項垂れる。
無理じゃん、無理無理無理。
だって、連日の徹夜でやつれた頬にうっすらと出来た目の下のクマ。
でろでろになった化粧面に、おまけに酒臭いときた。
こんな女、男からしたら最初っから対象外だろう。
終わった、私の初恋の種は育つ前に枯れてしまったのだ。
項垂れながら大きな、それはもう大きなため息をつく。
こんな事なら酒なんて飲まなかったのに。
それならまだマシだったかもしれないのに。
そう思いながら、私は舌打ちをこぼす。
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長月シキカ(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます! サブマスの小説って確かに少ないですよね……。鶴媛様のお言葉を胸にこれからも精進致します! 閲覧感謝です♪ (2022年1月2日 0時) (
レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - サブマスが出てくる小説少ないので嬉しいです！！ (2022年1月1日 20時) (レス) @page50 id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - きりさん» コメントありがとうございます! 最近ハマったポケモンという舞台での拙い作品にそのように言っていただき本当に嬉しいです＾＾確かにBWの作品って最近ないですよね……きり様の言葉を励みに、これからも頑張ります!! 閲覧感謝です♪ (2021年12月18日 23時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
きり - あ、ごめんなさい。「擬態が」の部分はミスです💦 (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
きり - 初コメ失礼します。すっごく面白いです！ポケモン、特にBWの小説は最近全然ないので、久しぶりに見つけてすごく嬉しくなりました。 サブマスの2人、いいですよね……！ゾロアも擬態がとても可愛いし、読んでいてほっこりします。これからも更新頑張って下さい！ (2021年12月18日 22時) (レス) id: dee96936d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年11月28日 2時
