４７無個性 ページ47
見送りをしてくれた校長に挨拶を済ませ、新しく購入したキャリーバッグを引き玄関の扉をくぐる。
ゴロゴロとキャリーバッグのキャスターの音を聞きながら歩みを進めると、なぜか怒りの表情をして今にも暴れ出しそうな爆豪君を切島君たちが必死でとめている場面が視界に入った。
「何やってるんスか。A組全員揃って」
「あらA。ちょっと聞いてちょうだ」
「Aさんっ!」
何かを話そうとした夢彦の言葉を遮るように声を張り上げたのは、麗日さんだった。
あまり聞くことのない彼女の大きな声に、私は何事かと思いつつ彼女の方に顔を向ける。
「お願いです! 考え直してください!」
「お茶子ちゃんの言うとおりだわ。私たち、まだAさんから教えてもらいたいことが山とあるのよ」
「俺たちからも頼むぜ! ほら爆豪っ!」
A組の子たちがそれぞれ頭を下げる中、切島君は爆豪君の背中をバシッと叩く。
そんな切島君を一睨みしつつも、彼は私を一瞥してぶっきらぼうに口を開いた。
「……悪かった」
短くつぶやくように吐かれたその言葉の意味を私は数秒かけて理解した。
おそらく数日前に廊下であったあの時のことだろう。
普通の人から見たら謝罪とは到底思えない態度だが、普段の彼のことを思えば立派だと言えるだろう。
「……分かってくれたのなら、自分はいいっスよ」
口元に笑みを浮かべながらそう言うと、爆豪君はフイッとそっぽを向いてしまった。
そんな彼の様子にやれやれと思っていると、今まで黙っていた夢彦が腕に付けた時計を見ながら声をかけてきた。
「A。そろそろ飛行機の時間に間に合わなくなるわよ」
「分かった。じゃあ行こうか」
そう私が言った瞬間、女子たちが私に抱きつき口々に「お願い、行かないで」と涙声でそう言った。
よくよく見ると、男子たちも各々何か言いたげな表情を浮かべている。
私は何故彼女らがこんな状態になったのか全く理解できないでいると、夢彦が呆れた口調で言葉を吐き出す。
「アンタたち大袈裟ね。たった二週間アメリカに行くぐらいで」
「……え?」
夢彦が発した言葉に、緑谷君が素っ頓狂な声を上げる。
それと同時に、私に抱き着いていた女子たちも「え?」とした表情を私に向けた。
「え、Aさん。用務員を辞めるんじゃ」
「辞めるわけないじゃないっスか。自分は少なくとも君らの卒業を見届けるまでは続ける気っスよ」
私がそう伝えると、彼らは張り裂けんばかりの声で「えーっ!?」と叫んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長月シキカ(プロフ) - メホニアンさん» コメントありがとうございます！マイク先生も相澤先生もかっこいいですよね^ ^ 更新頑張りますのでよろしくお願い致します！閲覧感謝です^ ^ (2017年11月28日 13時) (
レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
メホニアン(プロフ) - トマトを食べた後のマイク先生に、キュンとしました。優しい相沢先生に惚れました。更新頑張ってください！！ (2017年11月28日 13時) (レス) id: dbe6c4db20 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年11月4日 23時
