56話 異変 ページ6
酷い風邪をひいてから数日、ようやっと動けるようになった今日この頃。
私はたまった仕事を片付ける為、徹夜をしていた。
そういえば、あの文化祭から一ヶ月が近くなってきたが、射杜山の小娘はどうなっているんだろう。
一応、忍者隊の人たちからそれとなく城の外の事を聞いてはいるが特に異常はないらしい。
一体アイツはどこに現れるんだ。
ここ数日、何か嫌な予感を覚えているのに、この世界の地理を知らない私にはどうすることもできずいまだ情報を探す事しかできていない。
そんな歯痒さを覚えながら、最後の書類に目を通す。
そして最後の計算を終えたところで、障子が静かにスライドされた。
障子を開けたのは、忍術学園に行っていた筈の組頭だった。
あの風邪をひいていた時に自分の淡い恋心に気付いた私は、今組頭と会うのは少しだけ気恥ずかしく思う。
しかし、組頭はいつもの様子とは少し違うのを知り私は出来るだけいつものように声をかけた。
「どうかしたんですか? 組頭。保健委員会の子達に会いに行ったんじゃ……」
私がそう聞くが、彼は何かに迷っているような表情を浮かべながら黙り込む。
何かに迷っている人に話を無理に聞き出すのは、いかがなものかと思った私は組頭が口を開くまでジッと黙った。
それからやや間があき、組頭はようやく口を開いた。
「……君の話しは、本当だったみたいだよ」
「それって……まさか!?」
「そのまさかだよ。……忍術学園全体が、おかしくなっている」
彼のその言葉で、私の嫌な予感が的中していたことを悟った。
射杜山は、忍術学園を拠点にしている。
「組頭! 私をすぐに忍術学園に連れて行ってください!」
「分かった。尊奈門」
「はい!」
組頭の言葉でどこからか姿を現した尊奈門先輩に、組頭は山本さんと高坂先輩を呼ぶよう命じた。
「山本と陣内を呼んだら、すぐに忍術学園に来い。いいな」
「わ、分かりました!」
「頼んだぞ。我々は先に行く、行くぞA」
「は、はい!」
いつもは私をちゃん付けで呼ぶ組頭の初めての呼び捨てに、自分の心がドキリと跳ねた。
しかし、今はドキドキしている場合ではない。
私はすぐに気持ちを切り替え、組頭と共に忍術学園へと向かった。
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長月シキカ(プロフ) - riemoa0323さん» コメントありがとうございます! こちらこそ多数の作品がある中当作品を閲覧くださり感謝申し上げます!! riemoa0323様のお言葉本当に嬉しいです^^最後まで閲覧感謝です♪ (11月14日 22時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
riemoa0323(プロフ) - コメント失礼致します、とっっっても面白かったです!このような作品はあまり見かけないので出会えたことにとても感謝しています、素敵な作品をありがとうございました! (11月14日 0時) (レス) @page22 id: a94f27965a (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - 夕さん» コメントありがとうございます! 主人公と組頭が再会するエンドにするか別エンドにするか最後まで迷っていていたので、夕様のお言葉大変嬉しく思います^^最後まで閲覧感謝です♪ (10月10日 14時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
夕 - とても面白かったです!最後に組頭と夢主が再会できた時はとても嬉しかったです! (10月10日 0時) (レス) @page22 id: 50676421a4 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます! 確かにこのようなタイプの話はここではあまり見ないですよね...。最初この話が思い浮かんだときは他人に受けるものか心配でしたが小桜様のお言葉に安心しました^^ こちらこそ最後まで閲覧感謝です♪ (2022年9月28日 21時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年8月1日 0時