16話 着替え ページ16
お殿様の部屋から出た私は、自分の前を歩く男の後ろを着いて廊下を歩く。
にしてもこの男、背ぇ高ぇな。
これじゃあ私のチビさが際立つじゃなぇか。
そんな理不尽な苛立ちを視線に乗せ目の前の男の背中を穴があくんじゃないかってくらいに睨みつける。
そんな事を密かにしていると、ある部屋の前で男は足を止めた。
「ここが空いてるから、今日から君がここを使うように」
「ありがとうございます」
「じゃあ私は君が着れそうなの探してくるから、少し待ってて」
「……何から何まで、どうも」
「まぁ、そのタヒに装束のままじゃこっちも接しづらいからね」
そう言い、男は私から離れていった。
一応その後ろ姿が見えなくなるまで見送り、私は与えられた部屋の中に入った。
足を踏み入れた部屋の中を一言で表すなら、"ほぼ無"が一番適しているだろう。
その一言通り、部屋の中には物を入れる桐たんすに今でいう机のようなもの、確か文机(ふづくえ)といったか。
あと布がかけられた物体がその部屋の中には収められていた。
その布をはぎ取るとそこにはだいぶほったらかしにされていたであろう古びた鏡台があった。
古びてはいるものの鏡面はヒビもなく磨けば普通に使えそうだ。
試しにかけられていた布で鏡を拭いてみると、いい感じに輝いた。
「その鏡、気に入った?」
「! す、すみません」
「別に謝らなくていいよ、それもう誰も使ってないし」
着物を探しに行っていた男が戻り、私に話しかけてきた。
少しだけ肩を震わせ男の方を見る。
思わず謝罪の言葉を述べる私に、そう言う男の手には男と同じ色の布の山があった。
「君の体に合いそうな忍び装束をいくつか持ってきたけど、着方は?」
「……分かりません」
「だろうね。じゃあ最初言葉で説明するからちゃんと聞きなよ」
「はい」
私の返事を聞いた後、男は持っていた白く長い布と忍び装束の一つを床に広げ、サラシの巻き方、忍び装束の帯の結び方から、脚絆や手甲のつけ方等、一つ一つを丁寧に教えてくれた。
男の説明を聞いて、私は存外に簡単だなと心の中で思う。
「分かった?」
「はい、なんとか」
「じゃあ着てごらん」
そう言い先ほどの説明で使われた忍び装束を私に手渡した。
手渡されたその服と布を手に、私は男の方を見る。
その視線の意味を理解したのか男はスッと立って部屋の障子に手をかけた。
101人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長月シキカ(プロフ) - 桜餅の塩漬け葉っぱさん» コメントありがとうございます!主人公や閻魔様のキャラどうするか結構迷ったので笑っていただけて本当に嬉しいです^ ^ 閲覧感謝です! (2018年2月7日 22時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅の塩漬け葉っぱ(プロフ) - とっても面白いです。閻魔様と主人公のキャラが……www (2018年2月7日 22時) (レス) id: a55b533e90 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年7月21日 0時