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その小さな異変に気付くのが遅く、Aは物凄いスピードで距離を縮めてきた"何か"に首を掴まれそのまま地面に押さえつけられた。
"何か"とは言わずもがな、酒呑童子である。
Aは自分を襲う激しい痛みで失いかけた意識をなんとか保ち、片目を開く。
そこには、怒りで顔を歪めている酒呑童子の顔がぼんやりと目に映った。
あれ程の衝撃を受けておきながら、目の前に映る敵には怪我の一つも見当たらない。
Aは苦し気に顔を歪め呻いた。
「A!!」
「秋月!?」
「動くんじゃねぇ! 下等な人間風情共!! ……小癪な真似をしてくれる……!!」
「カハッ……!」
怒りに身を任せ酒呑童子はAの首を絞める力を強める。
ミシミシと軋んでいく骨の音を聞いても尚、沢田達は動くことが出来ない。
何故なら、先程まで動きを止めていた小鬼たちにより腕を縛られ身動きが取れないのだ。
"クソッ! Aを離せ酒呑童子!!"
"お前、"昔はそんな悪い事をするような奴じゃなかったろ"……!"
「! どういうことだ……?」
鵺の言葉に疑問を思ったリボーンが口に出す。
リボーンのその言葉に鵺は少しだけ口を閉じたが、すぐに言葉を吐き出した。
"酒呑童子は、俺達の昔馴染みだ。だが、今のコイツは俺達の知っている酒呑童子じゃねぇ"
「だろうな……俺は、新しく生まれ変わったのだからな!!」
"なんだと!?"
「俺は、ある偉大なお方のおかげでこのような強大な力を得る事が出来た! そしてこの力であのお方にさらなる高みへと連れて行くのだ!!」
「あいつは……何言ってんだ……? "あのお方"って一体誰のことなんだ……?」
怒りで我を忘れているのか口調すらも変わってしまったかつての馴染みを睨みつける事しか出来ない鵺をよそに、獄寺が訳が分からないとでも言いたげな表情を浮かべポツリと言葉をこぼす。
「冥土の土産に教えてやる……そのお方の名は……"悪鬼王"様だ!!」
「あっきおう……? 極限にどういう」
「これからタヒに逝く者に、知る意味などなかろうて……さて、まずはこの娘から逝かせるとしよう」
酒呑童子が地面に沈めていた自分の手を高々と上げると、軽々と持ち上げられたAの体がゆらりと力なく揺れる。
そんな状態のAの姿を、呆然と見つめるしか出来ない沢田達を一瞥し酒呑童子は口を開いた。
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年6月17日 20時