19標的 友が作ってくれた隙の段 ページ19
目の前に姿を現した酒呑童子は、全身が真っ赤に染まっており背丈は私の倍以上ある。
彼の両目は赤く充血し頭上には短いが太い二本の角がキラリと光った。
見たものを震え上がらせることは容易いであろう容姿をした酒呑童子は、私達を見下ろし睨みつける。
「まったく……これほどの力をもつ木精を従えておるとは、少々貴様を見くびっておったようじゃな。鎮め人よ」
「これ以上貴方をのさばらせておくわけにはいかない。ここで鎮めさせてもらいます」
「ふんっ。出来るものならばやってみせい! いでよワシの下僕共!!」
そう言い両手を上にあげると彼の後ろから数えきれないほどの小鬼たちが、キキキッと鳴き声を発しながらこちらを睨む。
それらを見た、沢田君達は素早く戦闘態勢に入った。
「下僕共! この愚かな者共に裁きの鉄槌を与えよ!!」
酒呑童子の言葉に従い、子鬼たちは一斉に私達に襲いかかる。
しかし、物凄い数の敵をものともせず沢田君達はいとも簡単に消滅させていった。
だが、消滅させても消滅させても酒呑童子の手で数を増やされ、キリがない状態になってしまっている。
そんな中、刀を振るう山本君が私に言葉を投げかけた。
「A! お前は親玉を狙え!」
「極限にそうだな! 親玉さえ倒せば何とかなる!」
山本君の言葉に同意した笹川先輩の声に、雲雀さんを除いた他の皆も私を見て頷く。
雲雀さんだけはモクモクと子鬼を殴り飛ばしている。
しかし一匹の小鬼を殴り飛ばした後、雲雀さんは私の方を見た。
「君が倒さないんなら、僕が行くけど?」
そう言った雲雀さんの足止めをしようとしているのか、雲雀さんの方に大量の小鬼たちが群がる。
そんな子鬼たちを雲雀さんは「邪魔」の一言だけをはきこぼし、思いっきり殴り付け消滅させた。
「私が、幻術で隙をつくるから……Aちゃんは敵を」
"A、ここは彼女らに任せて酒呑童子を鎮めさせるんだ"
「クロームちゃん、葛の葉……分かった、クロームちゃんお願い!」
「うん」
私の言葉に、クロームちゃんは三叉槍をクルクルと回しトンっと地面を叩く。
すると、小鬼を複数の火柱が襲う。
彼女が作ってくれた小鬼たちの隙をかいくぐり、酒呑童子へと真っ直ぐ駆けていく。
そして、酒呑童子の目の前で飛び上がり退魔の炎を灯した札を振り下ろした。
しかし私の攻撃はいとも簡単に弾き飛ばされた。
なんとか空中で態勢を整え、足から着地をする私を見て、酒呑童子は嘲り笑う。
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年6月17日 20時