９妖怪 伊作の思い ページ9
この家の食事をするリビングには十七人が座れる椅子と大きな机がある。
そのうちの十六席は埋まっているが、ただ一つ空いている席を見ながら僕――善法寺伊作は進まない箸を無理やり進ませている。
「Aは、もう学校に行ったのか?」
「うん。ご飯を作った後すぐにね」
僕がそう言うと仙蔵は「そうか」と小さく呟きお茶を流し込んだ。
僕たちがここで暮らし始めて数日がたつが、いまだAと一緒に食事をとったことがない。
朝はこうして僕たち全員が起きる前にそそくさと学校に行ってしまい、昼は給食、夜はすぐに自分の部屋に引きこもってしまうのだ。
「まぁ色々と多感な年頃なのだろう。我々もそう簡単に心を開いてもらえるとは最初から思ってはいない」
そうは言う仙蔵の顔はまるで自分に言い聞かせているように、眉間にしわを寄せていた。
「Aと一緒に遊んでやったらAは喜ぶかなっ!?」
「お前、そう言ってAの首取りそうだっただろうが!」
「今度は上手くやるぞ! なっ長次!!」
酷く明るい声でそう言う小平太に長次は僕たちよりはるかに小さい声でもそもそと囁いた。
席が遠い僕には聞こえなかったが、すぐ隣にいた小平太にはちゃんと届いていたようで「分かったぞ! 長次!!」と言い、再びご飯を口にかき込み始める。
「善法寺先輩もそんなに考え込まなくても、きっと時間が解決してくれますよ」
「そうそう! それに事を焦ったら色々と仕損じちゃいますよ」
「雷蔵に勘右衛門……うん、そうだね」
後輩に慰められるなんて、先輩失格だな。
心の中でそう思いながらも、僕は後輩に笑みを浮かべて見せた。
確かに、大川様が亡くなってまだ数日しかたっていないんだ。
大丈夫。きっとAはいつか心を開いてくれるはず。
「それに、Aは心の底から嫌っているわけじゃないんじゃないかな〜。もし嫌いだったらこうして僕たちの分までご飯作ってくれてない筈だよ〜」
「そう言えばそうだよな。やっぱ、Aは優しいんだよな〜」
顔をデレッデレにさせながら留三郎が言うのをすかさず犬猿の仲である文次郎がひろい、売り文句を叩きつける。
それを留三郎が買い文句で食ってかかり、いつもの喧嘩が始まってしまった。
流石に家が壊れる前に長次や仙蔵たちが止めた為、大事には至らなかった。
喧嘩するほど仲が良いともいうが、この二人の喧嘩は本当いい加減にしてほしい。
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長月シキカ(プロフ) - 戦国娘さん» コメントありがとうございます！戦国娘様のお言葉大変嬉しく思います！これから本編の更新も進めていけるよう精進致します^ ^ 本当にありがとうございました！ (2017年1月17日 21時) (
レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
戦国娘(プロフ) - 本編を読んで過去編を読み始めたのですがとても面白かったです(^^)本編の更新も心待ちしていますので頑張って下さい！ (2017年1月17日 21時) (レス) id: 55fa96ba6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年1月11日 20時
