２０妖怪 初めて兄と呼んだ日 ページ20
「伊作、Aが苦しがってるぞ」
そう言われた伊作さんは泣いていたのか鼻をすすり私から離れると、入れ替わりに仙蔵さんが私に近づいた。
そして、彼も伊作さんと同じように謝罪の言葉を述べる。
「A、すまなかった。我々に軽率な言葉でAを傷つけてしまった」
初対面の時からこの人だけは頭を下げることはないと思っていた為に彼の行動には驚いた。
この人も頭を下げることがあるんだ。
私はそんな二人に声をかけると二人はゆっくりと私の方を向いた。
「私のほうこそ、ごめんなさい。自分が勘違いしただけなのに酷い事言って……ごめんなさい」
伊作さん達に向かって深く頭を下げ、そして今度は十六人全員が自分の視界に入れると再び口を開いた。
「あと、約一年間、酷い態度を取って……ごめんなさい」
「……なんだ! そんな細かい事私たちは全然気にしていないぞっ! なぁ皆」
「えっ……?」
場にそぐわない底抜けに明るい声がこの場に響き、私は間の抜けた声が口から零れいつの間にか私の近くで目線を合わせるためしゃがんでいる小平太さんの大きくてゴツイ手が私の頭の上に乗せられ優しく撫でられる。
こうして撫でられていると、初めて会った時よりちゃんと私の事を考えてくれていることが良くわかる。
「私たちはなA。お前にいつまでも笑っていてほしいだけだ。だから笑えッ! A!」
そう言いニカッと笑みを浮かべる小平太さんを見て、私は周りにいる他の義兄たちに目を向けると皆小平太さんと同じように笑ってくれている。
こんなにも優しい兄たちに囲まれて、私はなんて幸せ者なんだろうか。
「……うん!」
私は溢れそうになる涙を袖で拭い取り、そしてお爺さんが亡くなって初めての心からの笑顔でそう言うと、満足したのか小平太さんが私を抱え上げ家の中へと進んでいく。
「なははは! 良い笑顔だぞA! 伊作、今日の晩飯は豪勢に肉にしよう!!」
「そ、そうだね! 勿論、今日はAの大好物の料理をたんと作るよ!」
「あ、私……カレーが食べ、たいな……伊作兄さん」
おずおずと初めて義兄たちに"兄さん"と敬称をつけて言ってみると、その場にいた兄たちの目が点になった。
え、私なにか変なこと言ったっけ?
そう思った瞬間、兄たちの両目からドパァッと大量の涙を噴き出しそして、私を囲んで大喜びしだし次は私、次は俺、次は僕とかわりがわりに"兄さん"と呼ばせたがる兄さん達に私はフッと笑みをこぼすのだった。
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長月シキカ(プロフ) - 戦国娘さん» コメントありがとうございます！戦国娘様のお言葉大変嬉しく思います！これから本編の更新も進めていけるよう精進致します^ ^ 本当にありがとうございました！ (2017年1月17日 21時) (
レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
戦国娘(プロフ) - 本編を読んで過去編を読み始めたのですがとても面白かったです(^^)本編の更新も心待ちしていますので頑張って下さい！ (2017年1月17日 21時) (レス) id: 55fa96ba6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年1月11日 20時
