１８妖怪 解ける誤解 ページ18
「散れッ……!!」
低く、そして鋭い言の葉を吐き出すと、周りで様子を見ていた他の化け物たちはまるで蜘蛛の子を散らしたかのようにその姿を消した。
化け物がみんないなくなったのを確認した留三郎さんはゆっくりと私に近づき私を見下ろす。
地面にへたりこんでいる私は必然的に目の前の彼を見上げる形になり、彼の顔はとても険しかった。
彼は自分の体の横につけていた手をゆっくり私に近づけようとするのを見て、私はギュッと目を閉じた。
「(ぶたれるッ!)」
そう思い次に来るであろう頭部の痛みに耐えようと全身を強張らせるが、私を襲ったのは痛みなんかではなく、優しい抱擁だった。
自分の思っていたのとは違うものに面食らった私の耳元で、留三郎さんは言葉を吐き出す。
「怪我は、ないか?」
「!!」
留三郎さんは迷惑をかけたはずの私を叱るでも怒鳴りつけるでもなく、ただ私の怪我の有無を聞くだけだった。
そして、私に怪我がない事が分かると彼は心の底からホッとしたように「良かった」と一言こぼすのだ。
「良かった……本当に、良かった」
「……どうして」
「ん?」
「どうして、助けに来てくれたの? 私、厄介な子……なのに」
やばい、自分で言って悲しくなってきた。
そんな事を思っている私に留三郎さんは優しく私の背中をポンポンと叩きながら言葉を紡ぎだす。
「何言ってんだ。俺たちは一度だってAを"厄介"なんて思ったことは無いぞ……伊作たちが言っていたのは、数週間前から隙あらばAに取り憑こうとしていたさっきの怨霊たちの事なんだよ」
「おん、りょう……?」
彼が言った言葉をオウム返しをすると留三郎さんは「そうだ」と答えてくれる。
なんだ、結局私の勘違いだったんだ……それなのに、私伊作さん達に酷い事言っちゃったんだ。
そんな私の考えが分かったのか、留三郎さんは口を開く。
「伊作たちの事なら、ちゃんと謝れば許してくれるって……だから俺達と一緒に帰ろう。あの家に、な?」
そう言いながら私の頭を優しく撫でる留三郎さんに、私は思わず溢れでた涙で頬をぬらしながら何度も首を縦に振ると、私を抱きしめていた彼は「よし」と言いながら私から離れ軽々と私を抱っこする。
もし、私に父親というものがいたならきっとこんな感じだったんだろうな。
「しっかり捕まっとけよ」
留三郎さんはそう言い、背中の大きな翼をこれまた大きく広げ地面を蹴るとあっという間に空に出来た切れ目の中へと入った。
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長月シキカ(プロフ) - 戦国娘さん» コメントありがとうございます！戦国娘様のお言葉大変嬉しく思います！これから本編の更新も進めていけるよう精進致します^ ^ 本当にありがとうございました！ (2017年1月17日 21時) (
レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
戦国娘(プロフ) - 本編を読んで過去編を読み始めたのですがとても面白かったです(^^)本編の更新も心待ちしていますので頑張って下さい！ (2017年1月17日 21時) (レス) id: 55fa96ba6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年1月11日 20時
