１７妖怪 助けての声 ページ17
ノイズ交じりの声を聞いた瞬間、私は自分がもっている力の全部を使ってその場から離れ声の主と距離を取る。
人間って本当に怖い思いをした時、悲鳴もあげられないんだ、とまるで他人事のように頭の片隅に思い浮かんだ。
距離を取りさっきまで自分がいた場所を見ると、壁からどろどろした何かが浮き出してきてドチャッと地面に落ちる。
その物体からはあちらこちらに大きさは様々の無数の手が伸びていた。
「ひっ!」
よくよく見ると私を囲う壁から次々と同じようなどろどろした何かが浮き出ては落ちてを繰り返している。
今私の目の前にいる一番大きな塊に口に見える穴がぽっかりと開き、その穴はニンマリと弧を描きノイズ交じりの声でこう囁いた。
「一緒二、彼方ノ世界二、行こウよ」
目の前の塊がそう囁くと弧を描いていた穴を大きく広げて私を飲みこもうとする。
スローモーションのようにゆっくりと進んでいく目の前の情景を目にしながら、私はいつの日かあの人達が言っていた言葉を思い出していた。
「"A……もしAが怖い目に遭ったら迷わず私たちを呼んでおくれ。そうすればAがどこにいようとも必ず助けに行くから"」
自分の部屋から一向に出てこない私に向かって十六人の義兄たちが言っていたあの言葉。
もし、もし、あの言葉が本当なら……。
「……けて」
お願い、都合のいい奴だと思われてもいい。
だから……!!
「助けてッ!! お兄ちゃぁぁぁん!!!!」
お腹の底から出した声は真っ暗な空に吸い込まれ小さく反響する。
私が突然出した大声に化物は少しだけビックリしたようで一時動きを止めたが、また再び動き始め私を飲みこもうとする。
あぁ、もう駄目だ……。
全てに絶望し私はソッと目を閉じ、次に襲ってくるだろう痛みに耐えるようギュッと眉間にしわを寄せる。
その瞬間、物凄い音が私の鼓膜を震わせ私は閉じていた目をパッと開かせるとそこには……。
「……無事か、A?」
「と、め……さぶ、ろうさ、ん……」
そこには黒い化物を長い杖のようなもので押しつぶしその化物の上に膝をついている妖怪の姿の留三郎さんの姿があった。
留三郎さんは化物の上で立ち上がり長い棒のようなものをトンッと化物の上に叩きつけると、まるで瞬間移動のようにその姿を消した。
よくよく周りを見ると留三郎さんの頭上には人が出入りするには申し分ない程度の切れ目があり、私を取り囲んでいた他の化物は心なしかビクビクしながら様子を窺っている。
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長月シキカ(プロフ) - 戦国娘さん» コメントありがとうございます！戦国娘様のお言葉大変嬉しく思います！これから本編の更新も進めていけるよう精進致します^ ^ 本当にありがとうございました！ (2017年1月17日 21時) (
レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
戦国娘(プロフ) - 本編を読んで過去編を読み始めたのですがとても面白かったです(^^)本編の更新も心待ちしていますので頑張って下さい！ (2017年1月17日 21時) (レス) id: 55fa96ba6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年1月11日 20時
