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「なんだ、もう行くのかA?」
「うん、訓練の時間だから。輝君もそんなのんびりしてたら遅れるよ。」
玄関で靴を履きながら、まだ寝巻きのままの輝君にのらりと話しかけられる。
「ふふんっ、俺くらいエリートともなれば社長出勤でいいんだよ!」
何故かよく分からないけど胸を張る輝君。
「何それダサい。」
「ちょっ!!Aちゃん!?お兄ちゃんに向かってダサいとは何事ですか!?」
大袈裟に後ろに仰け反る輝君。もとい我が兄。
「パーン中隊長は何をやるにも自分が一番率先してやってるよ。輝君も見習いなよ。」
「へいへいーかっこいいかっこいい!パーン中隊長ステキー」
下顎を突き出してハブてたようにそう言う輝君。因みに輝君は軍に籍を置いている。
彼の言うとおり、能力の秀でている彼がエリートであることは事実なのだろうが......
何せこの愚兄はそれをこれでもかと言うくらい鼻にかける。いわゆるナルシストと言うやつなのだろう。
だがまあ......
「んじゃまあ、気ぃつけてな!」
ポンッと、大きな手が頭に乗せられる。
「うん。」
私からしたら、優しくて大好きなお兄ちゃんだ。
※
「まあ、Aが嫌がるのも分からなくはないが......」
書類整理中、パーン中隊長に輝君のことを相談してみる。
「だって......わざわざ敵を作るような行動しなくたっていいと思いません!?」
「才能のある人間は、敵を作りやすいとは言うしなあ......。」
「それは自然にって話ですよね?うちの兄の場合自ら作りに行ってるんですよ!?アホでしょ!?」
「A輝といえば、皇国軍でもちょっとした有名人だが......あの垢抜けた性格から、多くの人間に慕われてるって話も聞いたぞ。」
書類と向き合いながら我が愚兄をフォローしてくださる中隊長。
なんていい上司なんだ......。
「ほんとですかそれ〜?」
「まあともあれ、お前が兄の事を慕っているなら、それでいいんじゃないか?」
ポンッと、兄とはまた違う大きな手が頭の上に乗せられる。
パーン中隊長がお兄ちゃんだったら良かったのに。どこに出しても恥ずかしくない自慢のお兄ちゃんだよ!
撫でてくださる手の間から中隊長の顔を伺って、気づかれないようふふっと笑う。
パーン中隊長も、輝君も、似ても似つかないのに、どこか同じような安心感。
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紫癸(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます!そして読んでいただきありがとうございます(嬉)少しでも力になれたのなら何よりです!お互い頑張りましょう!! (2021年4月3日 20時) (レス) id: 577fa76214 (このIDを非表示/違反報告)
やよい - 凄く面白かったです!凄く書く気が出ました ありがとうございます 頑張ってください (2021年4月2日 15時) (レス) id: 90306a3c24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫癸 | 作成日時:2021年2月24日 14時