及川徹はただのクラスメイト……である。【及川徹】

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はあ......重い。


いくら日直だからといって、この量は酷い。
私は今担任兼国語の教科担任に頼まれ、国語準備室へ数冊の辞書を運んでいる。

それがまあおもいったらありゃしない。
呪う.....、先生呪う......。




『あの、好きです!私と...付き合ってください..!!』




ぉうっっとおー..!!!?

角を曲がりかけた足を急いで引っ込める。


何でこんな所で.....もうちょっとほかにいい場所あったでしょうよ。体育館裏とか...校舎裏とか。


聞こえない程度に最大限にため息をつく。
どうしよう...迂回なんてしようものなら私の腕は確実に死ぬ。



しかも厄介なことに相手はアイツだ。
『青城高校 告白』で検索すれば膨大なhit数を稼げそうなこの男。


及川だ。




『ごめん、君とは付き合えない。』




逡巡していた所に及川のいつになく真面目な声が聞こえてくる。



え......?
"付き合えない"って...そんなはっきりフるの?


だったら何で......




『部活が、部活が忙しいからですか?』

『まあ、それもあるけど…。君のこと好きじゃないから。』




何で、そんなちゃんと振るなら、私のことも......。




『だったらあの!お試しみたいな...』

『そういうのはやらない。告白はありがとう、でもごめん。諦めて。』

『わ、かり...ました。』




淡々と、普段からは想像できないような声色でそう告げた及川。

後輩だと思われる女の子は廊下の向こうへ小走りで駆けて行った。




『諦めて。』




その言葉をくれたら、私だって諦めがついたのに...。なのに、どうして......。




「やっほー!Aちゃん、盗み聞き?」

「っ!?」




にゅっといきなり影から現れた及川に、私は肩をビクつかせる。




「別に、聞きたくて聞いたわけじゃない。これを運ぶための最短ルートがこの道だっただけで、不可抗力。」

「別に責めてるわけじゃないから気にしないでね！手伝うよ。」




そう、へらへらと笑いながら、私が抱えている辞書をごっそり奪う。


こいつのこういう、優しいところが嫌いだ。気のない女の子にそういうことをするから、私やさっきの子みたいに傷つく子ができるんだ。



そして......




「...ありがとう。」




少し嬉しいと感じている私自身がもっと嫌いだ。

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